原作者・伊与原さんと共に作り上げた
――NHKドラマ10での放送となりましたが、原作が7章構成なのに対してドラマ10は10話の枠です。脚本を拝読すると、特に7話目はオリジナルの展開が主になっていますが、限られた時間のなかで原作にないオリジナルの展開を入れるのは大変だったのではないでしょうか。
神林 そこは、かなり原作の伊与原先生にご相談をさせていただきました。実際にお目にかかって、それぞれのキャラクターのバックグラウンドや、原作のラストの更にその先の展開などをお聞きして、結果、主人公で科学部顧問の藤竹のキャラクターを膨らませるのがいいのではないかという話になりました。原作は羅針盤のようなものなので、原作にある話を脚本にしていくのは比較的スムースにできるんです。しかし、原作にはない話を脚本に落とし込むのには、とても苦労しました。オリジナルの話を作る中で、改めて原作の緻密さに気づき、伊与原さんはすごいなと実感しました。
今回、制作期間が短かったこともあって、伊与原さんに対しては正直ベースでいこうと決めていたんです。悩んでいることや原作を改変する必要がある部分は、ぜんぶ正直に伊与原さんに話そうと。それに対して、伊与原さんは親身に相談にのってくださり、また我々が不得意な科学に関する資料を送ってくださったりと、一緒にドラマを作り上げているという実感があり、本当に感動でした。
――脚本の作成やキャスティングも進めつつ、神林さんご自身でもリサーチのためにいろいろな取材をされたと伺いました。印象的だったことはありますか?
神林 最初は橋立プロデューサーと二人で取材を始めたのですが、夜間中学校を描いた山田洋次監督の映画『学校』の影響もあって、私たちは定時制高校には岳人みたいなちょっとやんちゃな人や年配の人たちが多いようなイメージをもっていたんです。でも取材に行くとそうではなくて、年配の方は昔より減っていたり、現役の高校生だけど様々な理由で全日制に行けない生徒が多かった。定時制の在り方が変わっているという印象を受けました。
また、原作のクライマックスにあたる日本地球惑星科学連合の大会にも伺いましたが、そこに参加している高校生たちの熱量には驚きましたね。『宙わたる教室』の感想コメントで「科学版スラムダンク」というのがありましたが、まさにそれを感じさせる盛り上がりでした。ドラマのなかで、クライマックスシーンをどう熱量を持って描くかということは課題としてあったので、その場にいるみんなが本当に純粋に科学のことを熱く語っている、という状況はすごく参考になりました。