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Q:高校の英語の授業が試験対策一辺倒になるのでは

A:進学校を中心に、いまでも試験対策に英語教育が支配されている現状があります。多くの学校では、数千種類にも及ぶ、出題方針がバラバラな1~3技能の入試に対応しなければならず、入試が近づいてくると生徒も先生も、過去問対策に追い回され、4技能どころではなくなります。英語の問題が、いくつかのよく似た4技能試験に集約されると、試験対策もシンプルになり、指導要領の延長の4技能学習になると期待できます。

Q:民間試験機関は試験の実施や採点など、安定的な運用ができるのか

A:今回認定された試験の運営団体は、日本や世界で長く大規模に試験を実施してきた団体に限定されました。また大学入試英語成績提供システム運営委員会が、今後も審査、支援をしていくことになっていますので、民間に任せて放っておくわけではありません。施行までの期間を使って、ありとあらゆる事故防止プロトコルを各機関は作っておく必要があります。

Q:高校3年時に受けた民間試験の2回までの結果が成績として送られることで、いつも試験を受けているような状況になり、部活や行事に影響が出るのでは

A:新テストの英語では、一発勝負ではなく、2回チャンスがあることになります。このことにより、より正確に実力が反映されると期待できます。実際には、よほど英語に自信がある受験生でなければ、受けるのは完全に受験モードに入った秋になるでしょうから、これまでの学校運営に大きく支障を来たすほどの影響は出にくいと考えられます。受験の天王山の夏が終わり、部活も引退し、AOや推薦の入試が行われている頃に、英語の試験のピークが来ることになります。

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©志水隆/文藝春秋

 大学入試選抜に対しては、受験生が安心して利用できるようにありとあらゆる安全策を講じることが重要だと思います。公平性を確保するためのさらなる努力や、万が一事故が起こった場合の対応マニュアルの充実など、施行までに試験機関がやらなければならないことは山のようにあります。これから2020年度までの時間を有効に使って制度を検証し、精査して問題点をあぶり出し、対策を講じていく。そのことがもっとも大事だと思います。私自身も今後は各試験の建設的なあら探しと改善提案を、関係者やマスメディアの皆さんと協力しながらやっていきたいと思っています。

 

©石川啓次/文藝春秋

やすこうち てつや
1967年北九州市生まれ。上智大学外国語学部英語学科卒。東進ハイスクール講師。文部科学省「英語教育の在り方に関する有識者会議」の委員を務めた。TOEICスコアは4分野すべて満点。予備校講師の傍ら、各種教育機関での講演活動を通じて実用英語教育の普及活動を行う。著書に『350万人が学んだ人気講師の 勉強の手帳』『できる人の教え方』など。英語参考書も多数にのぼり、著書の累計発行部数は400万部を超えている。

全解説 英語革命2020

安河内 哲也(著)

文藝春秋
2018年4月12日 発売

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