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 平川動物公園でも翌月に「ミナミ」がはやととの子供「アスカ」(雌)を産んだ。その後、同園はコアラの繁殖で他園をリードし、1990年代から現在にいたるまで国内最多頭数をキープしている(2024年10月現在は18頭)。

『すごいコアラ!―飼育頭数日本一の平川動物公園が教えてくれる不思議とカワイイのひみつ―』(新潮社/平川動物公園)

 国内では、先述の埼玉に続き1986年10月には横浜市金沢動物園がコアラを導入し、その後も1987年に兵庫県の淡路ファームパーク イングランドの丘、1989年に大阪市天王寺動物園(現・地方独立行政法人天王寺動物園)、1991年に神戸市立王子動物園、1996年に沖縄こどもの国と、飼育する動物園が増えていった。沖縄のコアラは2010年を最後にいなくなったものの、ほかの園ではいまも飼育中である。

日本で育ったコアラが飼育下での史上最高齢に

 コアラが日本に来て以来、飼育する各園から飼育係員や獣医師、またユーカリ担当者など現場関係者が集まって会議を開き、情報を交換するなど、相互に協力を行ってきた。この会議は「コアラ会議」と呼ばれ、現在は日本動物園水族館協会の生物多様性委員会・コアラ計画推進会議として開催されている。先述したコアラの出産日の統一見解もここで決められた。このほか、動物園の使命の一つである種の保存のため、コアラの飼育園のあいだではブリーディングローンと呼ばれる繁殖のための個体の貸し借りも盛んに行われている。

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2020年撮影。埼玉県・こども動物自然公園のコアラ ©文藝春秋

 人間でいえば100歳を超える長寿のコアラも多く、最初に来日したコアラの1頭である多摩動物公園のタムタムは、来園からじつに20年あまりを経た2005年2月まで生きた(享年22)。淡路ファームパークで2022年11月に25歳で死んだ雌の「みどり」は、その前年に飼育下での史上最高齢コアラとしてギネス世界記録に認定されていた。

 とはいえ、日本のコアラは必ずしも安泰ではない。全国での飼育頭数は1997年の96頭をピークとして、以後少しずつ減少し、2024年10月現在で57頭である。そのなかでコアラを飼育する7園では、将来的に「100頭のコアラを飼う」という目標を立て、遺伝的な多様性を維持しながら、安定した個体数の確保を目指している。