1ページ目から読む
6/6ページ目

一連の取材で、私たちが大事にしてきたのが、不動産の専門家たちだけでなく、地権者や住民たちの声だ。実際に、私たちの放送や記事を見て、毎回身近な再開発やマンションの問題などについて、多くの方々から情報や意見が寄せられている。どの分野でも、専門的な法律や知識、さらに業界の慣習を知悉(ちしつ)していなければ、問題の所在が理解できない。

ただ、届けられた情報を読みながら痛感したが、この不動産という領域は、当事者たちからの声を聞いて初めて知ったり、気づかされたりすることがより多くあると感じる。だからこそ、皆さんからの情報提供は心からありがたい。

一方で、それに甘えてばかりいてもいけない。こうした再開発に関わる案件は、民間同士の取引に見えても、行政も許認可などで関わっている。それらの情報はオープンにされなかったり、目につきにくい担当部局のホームページに載せられたりしているだけだが、だからこそ、取材するこちら側の問題意識と感度が試されている。

大河内 直人(おおこうち・なおと)
NHK首都圏局 遊軍キャップ
愛知県出身。1998年に入局し、静岡局、報道局社会部、新潟局で教育や貧困問題などを取材し、NHKスペシャル「ワーキングプアIII」「無縁社会」、クローズアップ現代「東大紛争秘録」などの番組制作にも関わる。社会部デスク、おはよう日本CPなどを経て現職。オープンジャーナリズムの手法と当事者目線からのリアリティを追求した「霞が関のリアル」「保育現場のリアル」「不動産のリアル」などのシリーズを展開。