都心の一等地では、いまでも悪質な地上げが行われている。住民たちが”不動産業者”による執拗な嫌がらせを受けても、警察や行政が対応するのは難しい。NHK取材班がまとめた『人口減少時代の再開発』(NHK出版新書)からお届けしよう――。(第3回)
※本稿は、NHK取材班『人口減少時代の再開発』(NHK出版新書)の一部を再編集したものです。
「高層ビル開発」が止まらない東京
高度経済成長期に建てられたビルなどが更新時期を迎えている日本。古い建物をまとめて取り壊し、高層ビルやタワーマンションなどを建てる再開発事業が各地で盛んに行われている。首都圏はもとより、たまに訪れる地方都市でも、駅に降り立ったとき、「知らない間にここにも高層ビルが……」と驚かされることがしばしばある。
ただ、開発が顕著なのはやはり東京だろう。ここでは近年、本当に街の至るところで、高層ビルによる開発が行われている。都心には、2023年に地上64階、高さ330メートルの麻布台ヒルズ(港区)が開業。現代アートのような特徴的な外観で、大阪のあべのハルカスを抜く、日本一の超高層ビルだ。
湾岸部にも2024年に、東京オリンピックの選手村跡地にマンション群「晴海フラッグ」が誕生した。建設中のタワーマンションを含む19棟もの分譲マンションが立ち並び、入居予定者はおよそ1万2000人。新たに小学校や商業施設などもつくられ、まさに、新たな街一つが湾岸部に出現した形だ。
これ以外にも、東京では秋葉原(千代田区)、京成立石(葛飾区)、中野(中野区)、自由が丘(目黒区)、石神井公園(練馬区)など、各地の駅周辺で高層化による再開発計画が相次いでいる。
実際に高層ビルへのニーズは根強い。都心につくられる高層ビルはオフィスや商業施設などが入るが、今も需要が高いとされる。
また、各地のタワーマンションも相変わらず人気があり、新築マンションの平均販売価格は上がり続け、東京23区では2023年に初めて1億円を超えた(不動産経済研究所調べ)。この価格高騰は地価や建設資材の高騰などが背景にあるということだが、これだけ値上がりし続けても、その人気に陰りは見えていない。