「溺れることはないだろう」覚醒剤をやめられなかったワケ

――最初に打ってから、どれくらいで2回目を。

橋爪 2、3カ月後とかですかね。「やる?」って聞かれて「うん」って感じで。2回目も、同じような高揚感が押し寄せてきて。

 ルールってわけじゃないんですけど、仕事の前には絶対やらないとか、自分のなかで決めていたことがあって。そんなふうにやっていたら溺れることはないだろうって気持ちがあって、「それを守ってればいいじゃん」っていう。

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「自分のルールの中で使ってるなら、ひどくはならないから大丈夫だろう」ということなんですけも、そもそも仕事の前であろうとなんだろうと薬をやってる時点でダメなんですけど。

 

――夜に覚醒剤を打った場合は、そのままオールで遊んだりするわけですか。

橋爪 そういう日もあれば、家に帰って普通に寝る日もあって。ほんと、普通に暮らせちゃっていたんですよ。それこそ、家で暴れてしまったとか、そういうことがあれば、もっと早く対処できたかもしれないですけど。

――最初の頃は、分けてもらったり、もらったりが多いと思いますが、常用するにしたがって自分でも買うように。

橋爪 そうですね。ただ、買うにしても、僕は持ってる子にお金を渡して分けてもらうようになりましたね。売人から買ってる友達から又買していた形ですね。その子も儲けるつもりはなくて、ほんと買ってきたから分けようという感じで。

仕事の合間、月に1回くらいのペースで薬物をやっていた

――それまで、タバコとか酒って。

橋爪 タバコはまったく。酒は飲んでましたけど、酒自体よりも飲みの場が好きだったんで。でも、パーティー的なものが嫌いなので、行きつけのバーのマスターと話しながらチビチビ飲んだり。

――なにかにアディクト(依存)したことは、特になかったと。

橋爪 依存とまではいかないかもしれないけど、同じものを食べ続けるとかはわりとありますね。たとえば、あるコンビニのある弁当が気に入ったら、ほかのものには目がいかないというか。でも、それがアディクトかどうかとなると、ちょっとどうなんですかね。でも、他の依存症の仲間には、そういう人もいますね。

 僕の場合、薬物に関しては激しい常習性がなくて。仕事の合間、月に1回くらいのペースで薬物をやっていたのもあって、常に欲しいというのはなかったんです。

 

――覚醒剤に手を出すようになって、仕事へのスタンスが変わったりは。

橋爪 あまり変わらなかったですね。いただいた仕事は、ちゃんとやらせてもらっていました。やっぱり、いい仕事をいただいていたので。

 ただ、二面性までとはいかないですけど、自分を使い分けるような感じになっていきましたね。仕事をしているときのいい子の自分と、薬物でそこから解き放たれる自分という、ふたつの自分を持って5年間過ごしてましたね。