「亡くなる何週間か前に、兄は実家に帰ってきているんです。少し前に自殺未遂を起こしたことがあったので、両親が心配して、休養するように促しての帰省でした。そのときに私も実家に顔を出して、兄と会ったんですね。そこで経営する会社が不渡りを出したことや、借金があるという話を聞きました。だけど兄は、『宅建の免許を取るから』と、再起を目指していたんです。がんばるからって。そんな人が自殺をするわけないじゃないですか」

 帰省していたBさんだったが、家にかかってきた裕子からの電話によって、慌てて福岡に戻っていったのだという。

高橋裕子が経営していたスナック「フリージア」の名刺(筆者提供)

「兄が自殺するとは思えない」

「当時は携帯なんかないですからね。実家に裕子から電話があり、私が出ました。兄に代わってくれというので、私が『いまさら話すことなんかないでしょ』と断ると、彼女は『いや、どうしても話さなきゃいけないことがあるから、代わってほしい』って。それで仕方なく代わったんです。後になって、あのとき電話を代わらなきゃよかったと後悔しました」

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 兄の死を知った妹が駆けつけると、裕子によって、すでに葬儀場が手配されていた。

「手際が良すぎるんですよ。式場では向こう(裕子)が話しかけてこなかったし、こちらからも話していません。その後、地元でも葬儀をやりましたが、裕子は来ませんでした。兄が自殺することはあり得ないと確信していましたが、両親はショックを受けて何もできない状態だったので、私が動いたんですね。生命保険について調べたら、亡くなって2日後には裕子が支払いの請求をしていたんです。それで私、彼女と電話で喧嘩しました。おかしいでしょって。すると今度は裕子の母親から電話がかかってきて、『娘がかわいそうでしょ』と文句を言ってくるんです……」

※本記事の全文(約5600字)は「文藝春秋PLUS」に掲載されています(小野一光「平成凶悪事件と『その後』 中洲スナックママ連続保険金殺人事件篇」)。記事全文では下記の内容をお読みいただけます。
【平成6年~12年】中洲スナックママ連続保険金殺人事件篇
#1 「なにしろ美人で華やかだった」夫2人を金目当てで殺害した女は〈白雪姫〉と呼ばれていた
#2 「保険金で新しくマンションを買いたい」女が夫を浴槽に沈めた後にとった“意外な行動”
#3 元捜査一課長が“事件の端緒”を実名証言「所轄から上がってきた検視の報告書を見ていて、あれ?と」 この記事
#4 担当刑事が明かした秘匿捜査の中身「バレたら終わりですから。署内の道場に泊まり込んで…」《実名告白》 

■連載「平成凶悪事件と『その後』」 記事一覧
​【平成17年】 大阪姉妹連続殺人事件篇
#1~#4 みんなから愛された姉妹は帰宅直後に殺害された
【平成15年】福岡一家4人殺人事件篇

#1~#4 犯人逮捕を喜ぶはずの遺族の周辺から「結末に納得がいかない」との声が
【平成18年】秋田児童連続殺人事件篇
#1~#4 「そこ写すなって言ってんだろ!」と報道関係者に怒りをぶつけた畠山鈴香
【平成16年~17年】福岡3女性連続強盗殺人事件篇
#1~#4   「すぐに死刑というふうにしないと。おかしいやろ、税金でメシ食わせるのって」