撮影の時は本当の家族のようだった

 長男役で出演したツェン・ジンホアもこの日監督とともに登壇、華やかな笑顔を見せた。

パン監督(左)とツェン ©文藝春秋

「僕はパン・カーイン監督とは不思議な縁があってこの映画に参加することになりました。それは『ハロー!?ゴースト』(2023・配信中)という作品で、この映画にパン監督は役者として出演していたんです。それが出会いでした」

 ツェンが演じた、飄々として明るい性格の長男・子夏は、この映画にもっとも笑いをもたらしてくれる存在。自らの秘密を知らず、導かれるようにあるラブホテルで働きだすのだが……。

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「『我が家の事』については、多くの思い出があります。お母さん役お父さん役、子役の人たちと、パン監督の故郷でずっとロケをしていました。監督が思い出の場所や美味しいものなどを案内してくれて、僕たちはたっぷりと味わわせてもらった。僕らは撮影期間中、まるで本当の家族のように過ごしたわけです。この作品はきっと、誰しも自分の過去と照らし合わせて考えることができる部分があるのではないかと思います」

 観客からこの映画で苦労した点について質問がでると、ツェンはこう答えた。

パン監督(左から2人目)とツェン ©文藝春秋

「撮影の時の僕の一番の課題は、監督が思い描いている人物にどれだけ近づいていけるか、ということでした。それを成し遂げるために、とても長い時間努力をしました。その中でいちばん役に立ったのは、絶えず監督と話をすることでしたね。撮影に入る前、入ってから、何かにつけて監督と深いコミュニケーションをとっていきました。

 もっとも印象的な場面は、バルコニーのところで父親と2人で並んでいるシーンです。背中から撮っているのですが、ここをどう演じるか、やはり監督とかなり相談したことを覚えています」

 ごく普通の家族に隠されたある秘密。その秘密によって苦しみ、引き裂かれ、再び結ばれる姿を、家族それぞれの視点から丁寧かつ滑稽に描く。『姉ちゃん』(OAFF2022)、『できちゃった⁈』(OAFF2023)のパン・カーイン監督による長編初監督作品。
監督・脚本:パン・カーイン

出演:ラン・ウェイホア、カオ・イーリン、ツェン・ジンホア、ホアン・ペイチー/2025年/台湾/99分/公開未定 ©2025 Key In Films Ltd.