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「週刊新潮」の「食べてはいけない『国産食品』」は本当に食べてはいけないのか?

「週刊新潮」の「食べてはいけない『国産食品』」は本当に食べてはいけないのか?

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危険性が指摘されている3点とは?

(1)ハムやソーセージなどの加工肉に含まれる3つの添加物、亜硝酸Na(ナトリウム)とソルビン酸、リン酸塩

(2)レトルト食品や冷凍食品に含まれるタンパク加水分解物と酵母エキス、化学調味料の“味覚破壊トリオ”

(3)パンなどに含まれるトランス脂肪酸

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 連載第1弾で真っ先に紹介されているのが、(1)ハムやソーセージなどの加工肉に用いられる3つの添加物、すなわち亜硝酸Naとソルビン酸、リン酸塩の持つ危険性である。

 特に、発色剤などに用いられる亜硝酸Naと保存料などに用いられるソルビン酸の2つは「相乗毒性」を持つとして、見出しにも、〈毒の相乗効果で発がん性の「ハム」「ウィンナー」〉と恐ろしい言葉が並ぶ。

 新潮によれば、「相乗毒性」とは、〈それぞれが持つ毒性だけではなく、組み合わさることで毒性が増し、例えば、新たな発がん性物質が発生するような場合に使われる言葉〉だという。

 根拠としたのが、食品安全委の「食品健康影響評価書」だ。

〈ソルビン酸が広範に使用される一方、亜硝酸塩も食肉製品の発色剤として多用され、両者がしばしば共存するという事実と、両者の加熱試験反応によりDNA損傷物質が産生されることが報告されている〉

 

 前述のように、食品安全委はこの引用に対し見解を示している。新潮の引用部分には、以下のような続きがあることを指摘したのだ。

〈この結果は特別なin vitro (試験管内)における実験条件下で得られたもので、ソルビン酸と亜硝酸ナトリウムが食品中に共存した場合に実際に形成されることを意味するものではないとされている〉

 食品安全委の添加物専門調査会で専門委員を務める中江大東京農業大学教授が解説する。

「『特別な実験条件』とは、亜硝酸Na溶液とソルビン酸溶液を混ぜて、90℃で1時間湯せんしたということです。体内で90℃に達することはありえないので、ヒトへの危険性を示す実験結果とは言えません」

 この異議に対し、新潮は記事中で、「評価書」に掲載されたマウスの染色体異常を示す実験結果を引用し、反論した。この実験結果が、「相乗毒性」を示すと主張したのだ。だが、中江教授はこう指摘する。

「このマウス実験についても異常が出たという結果もあれば異常なしとする結果もあった。矛盾した結果が出ており、信頼できるデータではないんです。評価書でも〈ヒトの健康に対するハザードがない〉と明記しています」

「専門家ではないのでわかりません」

「相乗毒性」に関する信頼できるエビデンス(科学的根拠)はないのか。新潮にコメントを寄せ、「相乗毒性」を指摘してきた「食の安全を考える会」の野本健司代表に聞いた。

「90℃で1時間の加熱というのは、調理の過程で起こりえますから検証されなければなりません。ただ、相乗毒性が発生する詳しい条件については専門家ではないのでわかりません」

 食品安全委の事務局はこう嘆息する。

「評価書全体をご覧になっていない可能性があります」