文春オンライン
「週刊新潮」の「食べてはいけない『国産食品』」は本当に食べてはいけないのか?

「週刊新潮」の「食べてはいけない『国産食品』」は本当に食べてはいけないのか?

「味覚破壊トリオ」についてはどうか

(2)「味覚破壊トリオ」

 冒頭の中戸川氏が新潮誌上で度々指摘してきたのが、「味覚破壊トリオ」の危険性である。

 これはタンパク質を塩酸などで分解して生成した「タンパク加水分解物」と「酵母エキス」、「化学調味料」の3つを指すという。

ADVERTISEMENT

 これらは加工食品に広く使われるうまみ調味料だ。新潮は第2弾でこれらが含まれたレトルト食品の実名リストを載せた。翌週以降は冷凍食品、調味料、再びレトルト、そしてカップラーメンと5週連続でリストを掲載。「食べてはいけない」と商品実名リストを掲載する根拠になっているのが「味覚破壊トリオ」なのだ。その危険性とは、

〈食べ続けると、味覚障害を引き起こす可能性があり、それが塩分の過剰摂取を招いて高血圧など、様々な病のリスクが増大〉(記事)

 一般的に味覚障害の直接的な原因は亜鉛不足と見られている。「味覚破壊トリオ」が味覚障害を引き起こすとは、どのようなエビデンスがあるのだろうか。

 

「エビデンスと言われると辛い」

「味覚破壊トリオ」の提唱者である前出の中戸川氏に聞くと「ないでしょうねえ」と即答し、こう続けた。

「原因の一つではないか、と言われている程度です。化学調味料を使うとビタミンやミネラルが食材に溶け込まず、バランスの良い食事に繋がりません。そこには亜鉛不足も含まれますから、間接的には味覚障害の原因になりうるとは思います。

 私は化学調味料ではなく、お子さんにシイタケや昆布などの繊細な味をわかって欲しいという思いから新潮さんのお手伝いをしています。どちらかというとスピリチュアルな部分ですよね。エビデンスと言われちゃうと辛い部分がある」

(3)トランス脂肪酸

 パンやチョコレートなどに含まれるトランス脂肪酸。食用油を加工するプロセスで発生する不飽和脂肪酸の一種だが、これもたびたび登場している。

〈トランス脂肪酸は何%以下なら安心、というようなものではない。そもそも“有害物質”〉として心筋梗塞やガン、不妊症など様々な病気との関連性を指摘している。

 第4弾ではパン「一包装」あたりのトランス脂肪酸ランキングを掲載し、その翌週に今度はパン「一個」あたりのトランス脂肪酸ランキングを掲載している。それによれば一個あたりの含有量が最も多いのは、フジパンの「コッペパン~アーモンドクリーム~」で2.2gが含まれている。

 WHOはトランス脂肪酸の摂取量を総エネルギー摂取量の1%未満とすることを勧告しており、日本人の平均摂取エネルギーから計算すると約2gとなる。WHOの勧告量を考慮すると、先のコッペパンであれば一個食べただけで、超えてしまう計算になる。新潮の「食べてはいけない」との指摘には、確かに理がある。

 前出の中江教授が語る。

「トランス脂肪酸は現在は良くないものだということがわかっています。ですから不必要に摂取するべきではありません。ただ日本は欧米と比べてトランス脂肪酸の摂取量がかなり少ないのも事実です」

 食品安全委によれば、日本人のトランス脂肪酸の平均摂取量は総エネルギーの約0.3%だ。一方、アメリカ人は、約1.1%と高く、米国では使用制限などの措置がとられることになった。

「そもそもトランス脂肪酸をゼロにすることはできません。牛肉などの天然の食品にも含まれていますから」(同前)

 また、無理にトランス脂肪酸の摂取をゼロにしようとすると、別の危険性があるという。

「油脂類中のトランス脂肪酸量を減らすと、飽和脂肪酸が増える傾向があり、心臓疾患のリスクが減るどころかむしろ増える可能性もある」(前出・山崎氏)

 だが、どうしてもトランス脂肪酸が気になるという方には、食パンがおすすめだ。大手メーカーの食パンにはほとんどトランス脂肪酸が含まれていない。栄養成分表示によればフジパン「本仕込み」や山崎製パン「ロイヤルブレッド」は含有量がゼロだ。