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NHKは「中国人民解放軍の出先機関かも」

 すぎやまは、NHKについても強い不満をもっている。やはり同じ講演では、こんな真偽不明の話もしている。

「NHKのスタッフには、私が聞いた所によりますと朝日新聞からの天下りの方がかなりいらっしゃるそうです。またNHKの社屋の中に中国の放送局の支社があるという話を聞いたことがあります。ですから極端に言えば、NHKというのは中国人民解放軍の出先機関かもしれません」

 いくら「極端に言えば」といっても「中国人民解放軍の出先機関」は論理の飛躍ではないかとも思うが、先を急ぐ。

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 すぎやまによれば、共同通信も「やや反日軍に近い」。沖縄の「二紙」(沖縄タイムスと琉球新報と思われる)について、「二つともとても駄目みたいです」「直接沖縄に行って新聞を買って見た訳ではないのではっきり言えませんが、人づての話とか色々な雑誌の記事などを見た範囲で感じる部分ではとても危ないと思います」。

 まさに撫で斬り状態だが、反対に高く評価されるのは、先にも名前があがった産経新聞、月刊誌の『WiLL』、そして――、

「『日本文化チャンネル桜』は、日本軍の一員として凄く頑張っています」。

 すぎやまの「日本軍」「反日軍」の色分けは、現在の保守界隈の考えを反映しており、じつに典型的でわかりやすい。

すぎやまこういち関連書

「ドラクエV」で憲法9条を批判

 そんなすぎやまにかかればドラクエも「愛国」的に解釈されてしまう。

『WiLL』の2011年12月増刊号『すぎやまこういちワンダーランド』をみてみよう。ここで、すぎやまは淡路恵子と対談し、つぎのように述べている。

「僕がドラクエのストーリーで印象に残っているのは、『ドラクエV』に登場する『光の教団』。怪しい宗教団体が出てきて、司祭が『世の中に武器などというものがあるから戦争が起こるのです。皆さん、武器を捨てましょう』と布教するんです。

 村人たちがその言葉を信じて武器を捨てると、途端に魔物の群れが村を襲って占領されてしまう。現状の日本を思ってしまうシーンですよ。『憲法九条を信じて武器を捨てても、相手が武器を持っていたら乗っ取られるぞ』と。

(中略)ドラクエをやっていれば分かるように、平和は戦って勝ち取るものであり、戦う姿勢によって守られるものなんですよ」

 すぎやまの「愛国」発言は、歴史認識にせよ、慰安婦問題にせよ、現在の保守論壇的にオーソドックスなものが多い。それにくらべ、この「ドラクエV」を使った憲法9条批判はオリジナリティに溢れ、深く印象に残る。

すぎやまは「稲田朋美の歌」も作曲している ©AFLO

 さらにすぎやまは、2010年に青山繁晴(現・自民党参院議員)と対談し、こんな発言もしている。

「堀井雄二さんも、基本的に愛国者ですから、そういった部分がにじみ出てくるでしょうね」(「日本復活の呪文」)

「そういった部分」とは「愛国的な部分」ということだ。つまり、さきのような「愛国」的解釈はけっして牽強付会ではない、なぜならゲームデザイナーの堀井も「愛国者」だから……ということだろう。

 いずれにせよ、すぎやまこういちの政治性はいまや明らかである。彼は今日的な「愛国者」以外の何物でもない。その口から「大東亜戦争肯定論」がでてきても、まったくふしぎではない。

 肯定するにせよ、否定するにせよ、今後はこれが議論の前提だ。保守論客や保守政治家との対談や鼎談ならほかにも無数に存在する。もはや「意外な一面」などと驚いてはならないのである。