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2018/10/16

毎年百億単位の莫大な売上をもたらした

 にもかかわらず、これらの薬は医薬品売上ランキングの上位に入るほどがん患者にたくさん使われ、製薬会社に毎年何百億円という莫大な売上をもたらしたと言われています。クレスチンとレンチナンは有効性が定かでないことから次第に臨床現場で使われなくなり、結局、昨年から今年にかけて相次いで販売が中止となりました。ピシバニールも、がんの標準治療(世界中の臨床試験の結果に基づき、現時点で行える最も効果のある治療)には組み入れられていません。

©iStock.com

「がんが消えた! 治った!」

 ちなみに、クレスチンやレンチナンがそうであるように、キノコには免疫を活性化する作用があるとされています。そうした細胞や動物レベルでの実験データを元に、医薬品としてではなく健康食品として広まったのが、アガリクスやメシマコブなどでした。20年近く前、「がんが消えた! 治った!」「奇蹟のキノコ・アガリクス」といったタイトルの本の広告が連日のように新聞に載っていたのを覚えている人もいるのではないでしょうか。

 あれは実は「バイブル商法」と言って、本の形式を借りて健康食品を宣伝するための広告でした。「がんに効く」とされていても健康食品やサプリメントは医薬品ではないので、薬事法(現在の医薬品医療機器等法)に基づき、効能・効果の宣伝を禁じられています。しかし、バイブル商法では「本の宣伝」という抜け道を使って、堂々と新聞に広告を出していたのです。

薬事法違反で逮捕者も ©共同通信社

がん患者を食い物にする「がんビジネス」

 その本を買うと、アガリクスやメシマコブを飲んだおかげで「医師から見放されたがんが消失した」「末期がんから生還した」という体験談が何本も載っていました。そして、巻末やしおりに商品問い合わせの電話番号があり、そこに電話するとアガリクスやメシマコブが買えるという仕組みになっていました。

 しかし最終的には、これらの本を出していた出版社が薬事法で摘発され、体験談やがんに効くとされたデータもねつ造であることが発覚しました。やはり、がん患者を食い物にする「がんビジネス」だったのです。こうした広告は新聞に載らなくなりましたが、かたちを変え主戦場をインターネットに移し、販売が続けられています。

有効性が認められなかった「がん免疫細胞療法」

 もう一つ、免疫でがんを叩こうという発想から生まれたのが「がん免疫細胞療法」です。もっとも古典的なのが、1980年代に米国国立がんセンターのローゼンバーグ博士が開発した、「活性化自己リンパ球療法(LAK療法)」でした。患者の血液から採取した免疫細胞を研究室で培養し、増殖・活性化したリンパ球を点滴で戻すという治療法です。

 日本でもいくつかの大学病院や地方のがんセンターなどで臨床研究が行われていいました。国から、保険診療と併用できる「高度先進医療」(現在の「先進医療」)としても認められ、自費を支払えば患者もこの治療を受けることができました。

 しかし、LAK療法は2006年4月に高度先進医療から落とされてしまいました。通常、高度先進医療(先進医療)として認められた医療技術は、集められたデータで有効性と安全性が認められると保険診療に組み入れられます。ところが、LAK療法は結局、有効性が認められなかったのです。

 LAK療法だけでなく、免疫細胞療法には「樹状細胞ワクチン療法」や「ナチュラルキラー細胞療法(NK細胞療法)」「細胞傷害性Tリンパ球療法(CTL療法)」「ペプチドワクチン療法」など、様々な方法が研究されてきました。しかし、臨床試験によって有効性や安全性が確立されたものは今のところなく、保険診療にも標準治療にもなっていません。