「留学生30万人計画」蓋を開けてみると……
その後、留学生の数は“順調”に増え、1998年には「原則的に週28時間まで」のアルバイトができるようになった。そして、「10万人計画」を踏襲する形で「留学生30万人計画」が打ち出されたのが2008年。当時、約14万人だった留学生を30万人まで増やすべく、施行された。
当時の担当官のコメントが、オフィシャルサイトに残されている。
「グローバルな時代の中で、日本が、高度人材の大きな供給源となる留学生を高等教育機関に積極的に受け入れていくということは、日本の国際的な人材強化につながるのみならず、日本と諸外国との間に人的なネットワークが形成され、相互理解と友好関係が深まり、世界の安定と平和への貢献にもつながることだと考えています」
美辞麗句で飾られていてわかりにくいが、つまり、政府は「高度人材をより多く受け入れる」ことを至上命題に留学ビザの要件を緩和し、世界中から留学生をどんどん受け入れたのである。
だが、蓋を開けてみると、高度人材に結びつくようなエリート留学生の数はあまり増えていない。本の取材で話を聞いた東大大学院生のベトナム人留学生A君などは、全体から見ればほんの一握りの存在だ。留学生の多くは、日本語学校や専門学校に通う人たちである。
「高度人材の確保がもっとも難しい国」へ
来春に大学院を出て、日本で就職することが決まっているA君は、先日会った際、「在留資格は『人文知識・国際業務ビザ』にするか、『高度人材(高度専門職)ビザ』にするか、まだ決まっていません」といっていたが、実際に現在「高度人材ビザ」を持っている外国人は8000人にも満たない(2017年末)。
……と、ここまで原稿を書いていたタイミングで、こんな報道があった。
11月6日のNHKによれば、イギリスの大手人材コンサルティング会社がまとめた報告で、日本が「IT分野などの高度なスキルを持つ人材確保がもっとも難しい国」に認定されたという。かなり残念なニュースだ。
高度人材を呼び込むプラットフォームだったはずの「30万人計画」の失敗が明らかになった、というわけである。しかし、皮肉にも「30万人計画」は“(コンビニの接客など、日本人が嫌がる職に就く)労働力を確保する”という意味合いにおいては成功している。ひょっとすると、もとからそういう意図があって計画されたものだったのか、そんなふうにも訝ってしまう。
すでに目標の30万人計画を達成したいま、「ポスト留学生30万人計画」はどうなるのか。さらに受け入れ人数を増やして「50万人計画」とするのか。「100万人計画」とするのか。学生不足で経営難に悩む大学や専門学校や、特定技能1号が指定する14の職種から漏れたコンビニ業界などは、もっともっと留学生の数を増やしたいはずだが、担当の文科省は、留学生が30万人を超えて1年が経とうとする今も沈黙したままである。公式なアナウンスはない。