池袋から乗ったサラリーマンはどこへ向かう?
池袋駅東口を出たバスに乗っていた人は私も含め20人ほど。まずは北東にある王子駅を目指す。このあたりは山手線や埼京線の駅から微妙に遠い住宅地の中を走る。バスも他に何系統も走っており、各バス停で乗客が並んで待っている。
15分ほどで王子駅に到着。この間、学生の下車はあったものの、スーツ姿のサラリーマンは池袋から乗りっぱなしで殆ど下車しない。途中で乗ってきた人もいて、車内の人数は殆ど変わらない。彼らはどこへ向かうのだろうか。
「王40」系統は王子駅から本格的に鉄道路線から離れ、東武伊勢崎線の西新井駅を目指す。
ここで都営バスの運行情報を何気なく見る。すると、たくさんのバスが西新井方面からやって来ているのがわかる。しかも途中で何台も「団子」のようになっている。「なぜだろう?」と思いながら反対側を走るバスを見ると、ひっきりなしにやってくるにも関わらず、軒並み30~40人くらい乗っている。
「5000戸」のマンモス団地
そうこうしているとこちらのバスでも10人近くが降りた。地図を見ると、とりわけ大きな「豊島5丁目団地」がある。私も一度ここで下車し、まちの様子をみることにした。
豊島5丁目団地は1972年に造成されたUR(都市再生機構)の団地だ。大型で高層の住棟を中心に13棟・約5000戸からなり、周辺の住宅地も含めた人口は約1万人にもなる。この住民の多さが「王40」系統の収入を支えているのだろう。
しかし、団地はあくまでも人が住むところ。人が通勤しにくるところではない。池袋で乗り、先ほど降りたサラリーマンたちはどこへ向かったのだろう。
2分未満の間隔でバスが来る
あらためて地図をみると、周辺にはトンボ鉛筆本社や日販の流通センターをはじめとした大きな工場や事業所がいくつか存在する。彼らはここへ通勤する人たちだったのだ。さらに、「王40」系統がこの後向かう西新井方面にもたくさん工場や事業所が続いている。つまり「王40」系統は大規模団地からの通勤の足だけではなく、工場へ向かう通勤の足にもなっていたのだ。
ちなみに、豊島5丁目団地と王子駅を結ぶバス系統はじつは2つある。1つは私の乗ってきた「王40」系統。もう1つは、豊島5丁目団地から王子駅を経由して赤羽駅へ向かう「王57」系統だ。「王57」系統は、豊島5丁目団地から王子駅の間だけ運行する便も多い。そのため、朝ラッシュ時は平均2分未満の間隔でひっきりなしにバスが走る。そして先述の通り、バスの本数が多くてもどの便にも人がぎっしり乗っている。バスが途切れることがない利便性が需要を喚起していると言えるだろう。