万国博覧会は19世紀中頃から世界各国で開催されてきた。産業革命以来の成果や国際協調を象徴するコンクール、物産展であり未来の博物館でもある。昔は主役といえば技術の粋を集めた時計だった。名にしおうブランドはこの檜舞台で評価と名声を高めてきたのだ。
※RGはローズゴールド、PGはピンクゴールド、YGはイエローゴールド、SSはステンレススチール、PTはプラチナ、数値はケース径、型式番号です

Patek Philippe(パテック フィリップ)/カラトラバ
19世紀前半の懐中時計の時代、ぜんまいを巻き上げる別備えの鍵を不要とし、リュウズによる巻き上げを考案したパテック フィリップ。今日のカラトラバは65時間も駆動する。今では当たり前に思えるが、リュウズで巻き上げる指先の感触とともに楽しみたい。手巻き、RG、39mm、6119 ¥5,370,000/パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター☎03-3255-8109
Photo: Droits réservés à Patek Philippe SA
万博とともに時計は繁栄を導く
1851年、世界初の国際博覧会はロンドンだった。来場者の熱狂のなか、パテック フィリップは青いエナメル装飾のペンダントウォッチを展示。これをヴィクトリア女王に献上している。同じく出展者にフェルディナント・アドルフ・ランゲがおり、こちらも成功を収めた。1889年のパリ万博では時計ブランドに多かった都市圏でなく、スイス・ジュウ渓谷の山村で家内制手工業から生まれた複雑時計が発表された。それがオーデマ ピゲだ。1900年に近代五輪と併催されたパリ万博では、品質の高さからオメガが大賞を得ている。
パテックの創業者の一人、アントワーヌ・ノルベール・ド・パテックはナポレオン戦争後、スイスに移った亡命ポーランド人であり、ランゲは修業を重ね、戦争で疲弊した故郷ザクセンに時計産業をもたらした。万博は、混沌の世を脱却した進化の象徴でもあった。時代を経てそれは、宮廷やブルジョワの嗜好だけでなく、人々が見出す未来や価値観をも映し出す舞台となっていく。万博をそう導くかのように時計は発展してきた。昨今、そうした発信の場は万博を超えた域にも広がり、時間のある限り、時計は進化を刻み続ける。
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