日本の経済の中心地、東京・丸の内。敏腕経済記者たちが“マル秘”財界情報を覆面で執筆する
★世襲NOの真意
2019年度は4期連続の最高益を見込むファーストリテイリング(柳井正会長兼社長)。18年11月に柳井氏の息子である柳井一海氏と康治氏が取締役に就任し「すわ世襲か」と目されていたが、当の柳井氏は「息子たちに経営者はやらせない」と明言。取締役CFO兼グループ上席執行役員の岡﨑健氏や、全社を挙げたサプライチェーン改革である有明プロジェクトの責任者で上席執行役員の神保拓也氏なども後継者候補であると匂わせている。
柳井氏がトップの座を譲る節目は、ネット通販(EC)事業が軌道に乗るかどうかだと見る向きは多い。
イタリアなど初出店の国を増やしている海外事業に現時点で大きな不安はないが、EC事業は近年苦戦続きだ。17年に有明プロジェクトが始動した際はファーストリテイリングと関係の深い三菱商事(垣内威彦社長)出身の人物に運営を任せたが、現場の意思統一が取れずECを中心とした業務が混乱。短期間でクビを切った経緯がある。
ヤフーが傘下に抱えたZホールディングス(川邊健太郎社長兼CEO)がZOZO(澤田宏太郎社長兼CEO)を買収するなど、ファッション分野におけるECの競争は過熱する。ファーストリテイリングも一角に食い込むべく19年度全体売り上げの11.6%だったECを早期に30%まで持っていく計画だ。
具体的には、物流システム会社のダイフク(下代博社長)との提携による物流倉庫の自動化で、過剰在庫や販売機会ロスの削減を進める。商品の企画や生産計画では、グーグルやアクセンチュアの技術や人員を活用するなど、外部パートナーとの連携を積極的に図り成果が出ている。
とはいえ、柳井正氏がトップの座をすぐ明け渡すかどうかはわからない。現在ゲーム関連の会社で社長CEOを務める玉塚元一氏が一度柳井氏から社長を継いだものの、わずか3年でクビになったのは有名な話だ。結局のところ、齢70の創業者が抱く野心がいつまで続くか次第だろう。
★セブン&アイの大リストラ
日本の小売業を牽引するセブン&アイ・ホールディングス(井阪隆一社長)が大規模なリストラ策を出した。
まずメスを入れるのは百貨店のそごう・西武(林拓二社長)だ。06年に買収した際、傘下の百貨店は約30店あったが現在は15店に。今回さらに5店を閉鎖。2店の売り場面積を減らす。
衝撃的なのは「そごう徳島店」の閉鎖だ。衰退が叫ばれて久しいが、それでも全都道府県に百貨店は存在していた。そごう閉鎖で徳島は全国初の百貨店ゼロ県となる。
総合スーパー(GMS)も苦戦が続く。イトーヨーカ堂(三枝富博社長)は、全158店中33店を閉店か他社へ譲渡。ドル箱だった傘下のコンビニ最大手セブン-イレブン・ジャパン(永松文彦社長)は不採算店約1,000店を閉鎖・移転する方針だ。
小売り唯一の成功モデルのコンビニも岐路に立っている。深刻な人手不足に直面する加盟店から時短営業を求める声が上がり、11月1日からフランチャイズ加盟の8店舗で本格的な時短営業に移行した。しかし、「脱24時間」が本格的に広がるかは見通せないのが実情だ。セブン&アイの幹部は八方塞がりの現状の打開策をこう語る。
「次はイトーヨーカ堂の分社化(セブン&アイHD本体からの切り離し)とそごう・西武の売却だろう。百貨店を売ってしまえば鈴木敏文体制の“負の遺産”をすべて消し去ることができる。井阪さんが伊藤順朗取締役常務執行役員に大政奉還する形でイトーヨーカ堂の本体からの切り離しが実現するのでは」
イトーヨーカ堂の創業家の御曹司の伊藤氏を社長にする代わりに伊藤家に本体からの切り離しを認めさせるのでは、というのだ。
「GMSの切り離しは海外の物言う株主からも指摘されている。国内と米国のコンビニ事業に特化して、一点突破を図る道しかない」(外資系証券小売担当アナリスト)
小売業界は大きな曲がり角に差しかかりつつある。
★光通信のステルス戦略
光通信(重田康光会長)がここにきて投資会社の性格をひそかに強めている。
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source : 文藝春秋 2019年12月号