「私が社長です」のキャッチコピーと顔写真付きの広告で話題を集め、社長としてアパホテルを成長へと導いた元谷(もとや)芙美子(1947〜)。「彼女の大ファン」だという衆議院議員の海江田万里氏(76)がその魅力を語る。
元谷芙美子さんと初めてお会いしたのは、20年以上前。彼女の自宅が僕の選挙区にあったご縁で、お宅でのワインパーティーに招かれました。初対面の彼女の印象は、気さくでファイト溢れる女性。芙美子さんがアパホテルの社長に就任したのは1994(平成6)年。今でこそ女性経営者は多いですが、当時はまだ珍しかった。彼女はまさに女性活躍の先駆者と言えるでしょう。

その頃の彼女は、アパの知名度を上げるために自身が広告塔となって奮闘していた。トレードマークの帽子も、ご本人曰く「目立つためだけにかぶっているのではなく、本当に帽子が好きなの」とのことですが、プライベートの時はかぶっていないんですよ。あの帽子は、彼女にとって、オン・オフの切り替えスイッチ代わりなのかもしれませんね。
アパグループの前身は、芙美子さんのご主人の外志雄さん(現・アパグループ会長)が石川県小松市で興した住宅販売会社。それが発展してホテル業に進出したわけですが、ホテル業には芙美子さんの感性が発揮されていると思う。毎朝、ご主人を笑顔で送り出す彼女だからこそ、仕事で疲れた人が癒されるホテルづくりに心を砕いてきたのでしょう。

アパホテルが成功した一因が、「ビジネスホテル=最低限の設備しかない泊まるだけの部屋」というイメージを変えたこと。2006(平成18)年、千葉の幕張プリンスホテルを買収して改装した「アパホテル&リゾート〈東京ベイ幕張〉」がオープンした際は僕も足を運び、新設された広い大浴場に驚きました。設備投資は決して安くないと思いますが、それを上回るニーズがあると見込んだのでしょう。一方で「実は慎重なんです」と芙美子さんが話すとおり、必要以上に借金を重ねず、黒字経営を続けてきました。
芙美子さんには良き母としての一面もあります。現在、長男の一志さんはアパグループ社長兼CEO、次男の拓さんは専務として会社を支えています。親に反発して子供は別の道を選ぶケースもありますが、そうならなかったのは彼女の教育の賜物ではないかと思うのです。
共通点は「カレー」
芙美子さんと僕の共通点の一つがカレー。僕はカレーに目がなくて、食べ歩くのが趣味なんです。アパホテルでも、芙美子さんの顔をパッケージに載せた「アパ社長カレー」を販売。ホテル併設のカレー専門店もオープンし、神田界隈で開催されている「神田カレーグランプリ」というイベントに出店しています。以前、このイベントに行ったら、テントで接客する芙美子さんの姿があった。「どうして社長がここに?」と驚く僕に、「やっぱり現場に行かないとね」と。スタッフに任せて休むこともできるだろうに、本当に現場が好きなんだと感じましたね。
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