病室からのラストコール

鱒渕 秀人 ワイ・エムオフィス会長
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ミスターの“最後の親友”と呼ばれたのが、不動産会社ワイ・エムオフィスの鱒渕秀人会長(74)だ。毎日かかってくる電話は、集中治療室に入る直前まで続いたという。

 監督の享年は89。野球と読めますね。亡くなったのは6月3日。心臓が止まったのは朝6時3分で、亡くなったという診断が6時39分だったそうです。全て、監督が好きだった数字の3に因んでいます。

 お付きの方から「なるべく早く、お顔を見に来てください」と連絡を受けて、翌日の早朝にご自宅へ伺いました。ニューヨークから急いで帰国された松井秀喜さんが一番で、僕はその次でした。着いて、何気なく時計を見たら6時39分。前の日に監督が亡くなった時刻でした。不思議なこともあるんですね。

 監督と知り合ったのは、麻布の料理屋さんで。初対面なのに「九州出身ですから、西鉄ライオンズのファンです。日本シリーズで巨人をやっつけるのが楽しみでした」と挨拶しました。後で監督は、「たいがいの奴は俺の顔を見たら巨人ファンだと言うけど、あいつは正直だから信用できるな」と言っていたそうです。

ミスターの“最後の友人”といわれた鱒淵秀人氏 Ⓒ文藝春秋

 監督は脳梗塞のあと、リハビリに励んでいる時期でした。初台の病院に呼ばれて行くと、健康な人でもこなせないような厳しいトレーニングに挑んでいました。努力を決して見せなかった現役時代とは反対に、懸命にリハビリに取り組む姿を見せることで、周りの人たちに勇気が伝わると知っていたんでしょう。

 僕は15も年下ですが、監督と洋服の趣味が一緒なので、お揃いをたくさん持っています。ロロ・ピアーナ、キートン、ブリオーニ、エルメスと、好きなブランドが同じで好みもわかりますから、なかなか店へ行けない監督の代わりに、僕が買いにいきました。3月にドジャースの大谷翔平選手と並んで撮った写真で監督が着ている服はアルマーニですが、同じのを持っていますよ。

 毎年正月に僕は、京都の都七福神、伊勢神宮、川崎大師、成田山新勝寺、箱根神社をお参りします。倒れるまでいつも参詣していた監督の代わりに、お札と御朱印を授かって届けるためです。

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source : 文藝春秋 2025年8月号

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