交友は25年来。技術系人材派遣企業・フォーラムエンジニアリングの創業者で社主の大久保泉氏(77)が語る。
77年生きてきて、親や妻を見送ってきました。その喪失感はとても大きい。しかし今回の長嶋さんの訃報は、何か特別な感情を揺さぶられる悲しい知らせでした。6月4日に弔問に伺い、ゴルファーの青木功さんの次にお別れをしてきました。笑顔に見えるお顔だった。20分くらい前に座っているうち、抑えきれなくて涙が流れてきました。
子供の頃は、仏文学者だった父(慶応大学名誉教授の洋海氏)としょっちゅう後楽園球場に出かけました。お目当てはもちろん「四番・サード・長嶋」。引退試合も生で観ました。26歳の時です。東京・神田の17坪の一室で英会話教室を経営していたんですが、商売が上手くいかなくて悩んでいた時期でした。
あの日は車の中でラジオ中継を聴いていたのに、これが最後だと思ったら、どうしても長嶋さんを観たくなって、衝動的に球場に向かっていました。チケットはダフ屋から買いました。
50歳になる頃でしたか、スーツを仕立てに老舗テーラー「Marquis」に行った時、オーナーの佐々木康雄さんと雑談しながらゴルフの素振りをしていたら、背後から「お! やってますね~」と声がした。振り向くとニコニコした長嶋さんがいた。私は「ホンモノだ!」と固まってしまって口もきけませんでした。
本格的に知己を得たきっかけは、ゴルフ仲間だった料理店オーナーからのお誘いでした。「今度監督とゴルフなんですけど、一緒にどうですか?」と。事前に妻を連れてご挨拶に東京ドームへ伺いました。試合前の監督室にお邪魔すると長嶋さんはユニフォーム姿。背が高くて身体に厚みがあって、ありきたりの表現ですけど「太陽のようなオーラ」でした。
それからゴルフは100回以上いっしょに回りました。箱根のコースが多かったですね。長嶋さんは本当にゴルフが好きで、朝はいつも一番乗り。練習場では運転手の方がパッ、パッ、パッとティーにボールを並べて、野球のトスバッティングみたいに次々と打つんです。
有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。
記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!
初回登録は初月300円
月額プラン
初回登録は初月300円・1ヶ月更新
1,200円/月
初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。
年額プラン
10,800円一括払い・1年更新
900円/月
1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き
電子版+雑誌プラン
18,000円一括払い・1年更新
1,500円/月
※1年分一括のお支払いとなります
※トートバッグ付き
有料会員になると…
日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事が読み放題!
- 最新記事が発売前に読める
- 編集長による記事解説ニュースレターを配信
- 過去10年7,000本以上の記事アーカイブが読み放題
- 塩野七生・藤原正彦…「名物連載」も一気に読める
- 電子版オリジナル記事が読める
source : 文藝春秋 2025年8月号

