脳梗塞ーーミスターが託した日の丸

短期集中連載「長嶋茂雄と五輪の真実」第2回

鷲田 康 ジャーナリスト
エンタメ スポーツ 医療
日の丸には、細いサインペンで「3」という数字が記されていた——

緊急入院した長嶋茂雄

 2004年3月4日、アテネ五輪野球日本代表監督の長嶋茂雄は東京・大田区田園調布の自宅で倒れ、新宿区河田町にある東京女子医大病院に緊急入院した。

 日本代表ヘッドコーチの中畑清がその一報を聞いたのは、知り合いのスポーツ紙記者からの電話だった。

「大変なことが起こりました。長嶋さんが倒れて入院したという速報がテレビで出ています」

 中畑は一瞬、何が起こっているのかを理解することができなかった。

「だってオレの知る長嶋さんには、病気というイメージなんか、これっぽっちもなかったからね。まず思ったのが『ウソだろう!』って。それしかなかったよ」

 すぐさまテレビをつけた。各局のニュース番組、ワイドショーでは神妙な面持ちでアナウンサーが「長嶋入院」の速報を伝えていた。入院先の東京女子医大病院の周りにはすでにテレビの中継車が繰り出し、画面からは詰めかけた新聞記者やマスコミ関係者で騒然とした雰囲気に包まれる様子が伝えられていた。

「最初は現実をなかなか受け入れられなかった。でもよくよく考えてみると、長嶋さんは代表監督になってから、病気になるような世界でずっとやってきたのは確かだったなと思ったんだ」

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source : 文藝春秋 2021年6月号

genre : エンタメ スポーツ 医療