武井保雄 艶福の人生

溝口 敦 ノンフィクション作家
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武富士創業者の武井保雄(1930〜2006)は、なぜ消費者金融のトップにまで上り詰めることができたのか。『武富士 サラ金の帝王』(講談社+α文庫)の著者のノンフィクション作家・溝口敦氏が、武井の特異な経歴から読み解く。

 武井保雄と初めて真正面から向き合ったのは、1983年のことだった。ビジネスマンとしての常識を備えた人物という印象は受けたが、都合の悪い質問は巧妙にごまかそうとするようなところがあった。なるほど、この口のうまさなら女を口説くのは得意だろうなと思う一方、取材対象として、私が惹かれる人物ではまったくなかった。

『月刊現代』7月号にインタビューを発表すると、雑誌の買い占めにあった。武井の指示によるものかはわからないが、私は武富士グループによるものだと確信していた。そこで翌月号にこんな原稿を寄せた。

〈武富士の買占めはただちに他の読者の閉め出しに通じる。思想、表現の自由を侵しかねない危険な措置であることは自明ではないのか〉

 その後、武富士や武井について書かれた記事が数多く発表されたが、訴訟に発展したものも少なくない。同年11月、『サラ金商人 武富士・プロミス・レイク・アコムの“帝王”たち』(後に他の記事を加え『武富士 サラ金の帝王』と改題)を書いた私に対して武井が訴えを起こすことはなかったものの、メディアに対しては強硬な態度で接するのが、サラ金で財を成し、「日本の高額納税者番付」のトップに立った武井という男だった。

武井保雄 Ⓒ時事通信社

 武井は渋沢栄一を生んだ埼玉県深谷市に生まれた。幼い頃に父親が愛人を作り、家を飛び出したため、母親が女手ひとつで育てた。それが武井の人生に与えた影響は小さくない。母性に恵まれた彼は、成長してからも女性に対して優しく、実際によくもてたと言われている。

「銀座や風俗の女には興味がない。私は働く女性に興味がある」

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source : 文藝春秋 2025年8月号

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