溝口敦「喰うか喰われるか 私の山口組体験」

文春BOOK倶楽部

佐久間 文子 文芸ジャーナリスト
エンタメ 読書

日本最大の暴力団との生々しい記録

 タイトルの「喰うか喰われるか」は、もののたとえなどではない。

 ジャーナリストである著者が、半世紀にわたり取材してきたのが山口組だ。本書は、日本最大の暴力団を相手どり、あるときは喰い、あるときは喰われ、自身や家族を傷つけられても一歩もひかなかったギリギリの攻防の記録で、収支報告書でもある。面白くならないはずがない。

 もともとヤクザに興味を持っていたわけではなかった。「アサヒ芸能」の新米記者として取材したのが始まりで、新創刊の月刊誌の目玉企画のために作家の卵の山口組取材に同行し、結局、自分で原稿を書くことになった。このときの記事をもとに書いた最初の本『血と抗争』が1968年、三一書房から出版される。『血と抗争』はロングセラーになり、印税総額は「700万円から800万円」、山口組から反撃を受けることもなく、「山口組を食い物にできた」。

 原稿料や印税が具体的に書かれているのが出版文化史的にも興味深い。山口組の記事には読者のマーケットがあり、第一人者である著者のスポーツ紙連載に400字1枚1万5000円の原稿料を提示されたという。破格だが、取材とトラブル処理の難しさを考えれば、それぐらいもらわなければ割に合わない。

有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。

記事もオンライン番組もすべて見放題
新規登録は「月あたり450円」から

  • 1カ月プラン

    新規登録は50%オフ

    初月は1,200

    600円 / 月(税込)

    ※2カ月目以降は通常価格1,200円(税込)で自動更新となります。

  • オススメ

    1年プラン

    新規登録は50%オフ

    900円 / 月

    450円 / 月(税込)

    初回特別価格5,400円 / 年(税込)

    ※1年分一括のお支払いとなります。2年目以降は通常価格10,800円(税込)で自動更新となります。

    特典付き
  • 雑誌セットプラン

    申込み月の発売号から
    12冊を宅配

    1,000円 / 月(税込)

    12,000円 / 年(税込)

    ※1年分一括のお支払いとなります
    雑誌配送に関する注意事項

    特典付き 雑誌『文藝春秋』の書影

有料会員になると…

日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!

  • 最新記事が発売前に読める
  • 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
  • 編集長による記事解説ニュースレターを配信
  • 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
  • 電子版オリジナル記事が読める
有料会員についてもっと詳しく見る

source : 文藝春秋 2021年8月号

genre : エンタメ 読書