日本最大の暴力団との生々しい記録
タイトルの「喰うか喰われるか」は、もののたとえなどではない。
ジャーナリストである著者が、半世紀にわたり取材してきたのが山口組だ。本書は、日本最大の暴力団を相手どり、あるときは喰い、あるときは喰われ、自身や家族を傷つけられても一歩もひかなかったギリギリの攻防の記録で、収支報告書でもある。面白くならないはずがない。
もともとヤクザに興味を持っていたわけではなかった。「アサヒ芸能」の新米記者として取材したのが始まりで、新創刊の月刊誌の目玉企画のために作家の卵の山口組取材に同行し、結局、自分で原稿を書くことになった。このときの記事をもとに書いた最初の本『血と抗争』が1968年、三一書房から出版される。『血と抗争』はロングセラーになり、印税総額は「700万円から800万円」、山口組から反撃を受けることもなく、「山口組を食い物にできた」。
原稿料や印税が具体的に書かれているのが出版文化史的にも興味深い。山口組の記事には読者のマーケットがあり、第一人者である著者のスポーツ紙連載に400字1枚1万5000円の原稿料を提示されたという。破格だが、取材とトラブル処理の難しさを考えれば、それぐらいもらわなければ割に合わない。
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source : 文藝春秋 2021年8月号