必要なのは「多文化主義」ではなく「同化主義」だ
人口動態や家族構造など社会の深層の動きに着目して、ソ連崩壊、リーマンショック、アラブの春、ユーロ危機、トランプ当選、英国EU離脱など数々の“予言”を的中させてきた仏の歴史人口学者エマニュエル・トッド氏にとって、「移民」は長年の研究テーマの1つだ。1994年刊行の『移民の運命』では、アメリカ、イングランド、ドイツ、フランスの移民政策と移民に対する国民感情を分析し、そこに伝統的家族構造の違いが決定的な影響を与えていることを明らかにした。
そのトッド氏は、日本の人口減少と移民政策に関しても、「このままでは日本の衰退を招く」とかねてより警告を発してきた。
4月に改正入管法を施行し、従来の方針を大きく転換し、ついに外国人労働者の受け入れ拡大に1歩踏み出した日本。トッド氏はどう見ているのか。
4月に始まった日本の外国人労働者(私は実質的に「移民」とみなします)受け入れ政策の詳細を把握しているわけではありませんが、外国人の受け入れ拡大は、間違いなく日本にとって望ましい政策でしょう。ただ、今の日本には他に選択肢がない、というのが真実だと思います。
私はちょうど1年前、「日本は核を持つべきだ」と提言しました(本誌2018年7月号)。今後、安全保障問題は、日本の死活問題となる、その際、核保有の是非も真剣に考えるべきだ、と。そう述べたのは、端的に言えば、使用する場合のリスクが極大である核兵器は自国防衛以外には使えないゆえに、「米国の核の傘」も幻想にすぎない、と考えたからでした。
しかし、私がこう申し上げた時、次のようにも付言しました。「国家が思い切って積極的な少子化対策を打つこと、出生率を上げるための社会制度を整えることこそ、安全保障政策以上に、日本の存亡に直結する最優先課題だ」と。
日本の唯一の課題は人口問題
私は人口学者です。人口問題は、数十年の潜伏期を経て一気に発現してきます。
その観点から言えば、人口減少は日本にとって最大にして唯一の課題です。
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source : 文藝春秋 2019年6月号