ルポ 東京外環の日本を学ぶ移民たち

外国人は本当に脅威か

八木澤 高明 ノンフィクション作家
ニュース 社会 国際 ライフスタイル

軋轢を生むクルド人、共生する中国人、バングラデシュ人。その違いは?

「何してんの? あの人おかしいよ。ただ食べに来たんじゃないよ」

 ひとりのクルド人男性が、私がケバブサンドを片手に店のまわりを見回していると、流暢な日本語で声を上げた。

 私は埼玉県川口市赤芝新田にいた。クルド人の解体業者が多く、資材置き場などがある地域である。川口市在住のクルド人が騒音問題や暴力事件などを引き起こし、問題となっているというニュースを耳にし、クルド人から直接話を聞けないかと思い、現地に足を運んだのだった。一軒のケバブ屋を見つけ、ケバブを食べながら、店のまわりを歩いていたら、店に来ていたクルド人が、私を不審者だと言ったのだった。

 これまで、何度かクルド人が集うレストランなどに足を運び、話を聞けないかと声をかけてみたが、日本語が通じなかったり、見知らぬ日本人と関わりたくないという壁のようなものを感じていた。私を不審者扱いしたクルド人は、日本語にも淀みがない。むしろ有難い存在のように思えた。

 私は、自ら男に近づき、取材に来た旨を告げ、名刺を差し出した。男は名刺を受け取ると、「写真撮っていい?」と言って、名刺にスマホを向け、その画像を誰かに送った。すると、すぐに返信が来た。

「取材はオッケー」

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source : 文藝春秋 2025年9月号

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