参政党の掲げる「國體」は天皇制を利用した昭和の軍事指導者に重なる
「戦後80年」「昭和100年」という節目の年の夏、日本は近年にない奇妙な地熱を帯びた「政治の季節」を迎えた。言うまでもなく参院選を焦点とする政党政治の新たな展開と、それに呼応する大衆的な動向のことである。現代日本の政治的な意識構造は、これまでの曖昧なグラデーションではなく、明確な姿をあらわし、画然とした分極化を示した。
そのことを語る前に、65年前を振り返っておきたい。戦後史のなかの「政治の季節」と言えば、まず60年安保闘争が頭に浮かぶ。いま改めて顧みると、安保闘争には歴史的な必然性があった。それは、戦後民主主義の世代による広範な怒りの表現であった。戦前の商工官僚であり東條英機軍事内閣の閣僚であった岸信介首相が、日本が対米従属を深めていく日米安全保障条約改定を強引に推し進めたことに対する大衆の反発であり、その反発のエネルギーの凄まじさは、かつて戦争を推進してしまったエネルギーを戦後民主主義下で反転させたものであるとも言えた。またそれは、第二次世界大戦の戦犯裁判を自ら行わなかった日本社会の代償行為でもあった。

1960(昭和35)年の「政治の季節」は、国民が戦後史のなかに主体的につくり上げた稀有の儀式という側面を持っていたのであり、歴史のうねりのなかに生起したものであった。
では、現代にあらわれた「政治の季節」とは、どのようなものか。
まず7月20日に投開票が行われた参院選の結果を見よう。この選挙の焦点は、大局的には、与党を構成する自民党と公明党が過半数維持に必要な50議席を獲得できるかどうかであった。石破茂政権は衆議院で少数与党のうえ、参議院で過半数を割り込むことがあれば、政権運営の基盤はさらに揺らぐし、国民の信任を問う意味でも、石破首相のリーダーとしての求心力がなくなったと見なされ得る。各メディアはそこをめぐってそれぞれ予測を立てていたが、蓋を開けてみれば、自公両党を合わせて47議席に留まり、石破政権は参議院でも少数与党に転落した。
立憲民主党は改選議席と同数で横ばい、国民民主党は改選議席の4倍を超える17議席で大幅増、参政党も14議席と大躍進、日本維新の会は改選議席に1議席増、共産党は半数以下となり、れいわ新選組は3議席、日本保守党は2議席、社民党は1議席を獲得して政党要件をかろうじて保った。
有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。
記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!
初回登録は初月300円
月額プラン
初回登録は初月300円・1ヶ月更新
1,200円/月
初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。
年額プラン
10,800円一括払い・1年更新
900円/月
1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き
電子版+雑誌プラン
18,000円一括払い・1年更新
1,500円/月
※1年分一括のお支払いとなります
※トートバッグ付き
有料会員になると…
日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事が読み放題!
- 最新記事が発売前に読める
- 編集長による記事解説ニュースレターを配信
- 過去10年7,000本以上の記事アーカイブが読み放題
- 塩野七生・藤原正彦…「名物連載」も一気に読める
- 電子版オリジナル記事が読める
source : 文藝春秋 2025年9月号 国家主義的右派政党の不気味な挑戦

