戦後80年、幽閉されていた「ウラの言論」が噴出した
歴史の地下水脈が地上に露出してきた。
「戦後80年」「昭和100年」の夏、地下から地上に湧き出し、社会を覆うに至った「政治の季節」、つまり参政党に象徴される国家主義的右派の勢力拡大について前回この連載で分析したが、現在の社会状況と歴史の地下水脈との往還作業をもう少し続けてみたい。そのために、今回は2つの「転換」を凝視することで、「戦後80年」のいまを描いてみようと思う。2つの「転換」とは以下を指す。
(1)「オモテの言論」から「ウラの言論」への転換
(2)「同時代史」から「歴史」への転換
まず(1)について述べる。1945(昭和20)年8月15日の太平洋戦争敗戦により、戦後日本は表向きは非軍事の時代に入った。そのことを現象として、同時に本質的に、分かりやすく言うとすれば、「オモテの言論」と「ウラの言論」が転換した、と表現することができるのではないだろうか。
戦前・戦中の「オモテの言論」とは何か。それは、戦争遂行のための人間観、歴史観、価値観を言語化したものである。基本的人権や個の自由といった現代では当たり前となっている市民社会の価値は否定され、「ウラの言論」とみなされて地下に潜って密教化した。市民社会の価値観からは外れるが、共産主義的な志向や反国家的な発想も当然のように弾圧された。戦前・戦中の「オモテの言論」とは、ひとことで言えば、戦時用語ということになる。
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