対米従属姿勢をどう変えるかが問われている
ドナルド・トランプ米大統領が恣意の限りに繰り出す施策に、この時代全体が翻弄されている。いま私たちは世界史的な岐路に立たされていると認識すべきであろう。言うまでもなくトランプ関税が世界中にもたらしたショックのことである。
大統領に就任してからおよそ3カ月後、トランプは4月2日に新たな関税政策を発表した。すべての輸入品に対して一律10パーセントの関税をかけたうえで、各国ごとに異なる税率を上乗せするというのである。日本に対しては24パーセントという高率の追加関税が課せられた。こういった上乗せされる関税をトランプは「相互関税」と称するのであるが、それは各国の消費税、為替政策、規制などの非関税障壁も考慮して関税率を算出し、その半分ほどを課す形にしたと言う。
トランプは演説で、「4月2日はアメリカの産業が再生された日として永遠に記憶されるだろう」「諸外国はアメリカ製品に多額の関税をかけ、法外な非関税障壁を設けてアメリカの産業を破壊しようとしてきた」と、自国の窮状を被害者として語りつつ、そこからの回復を成し遂げようとする自らを英雄的に押し出すという、大統領選以来の手法でアピールを行った。
だが、当然ながら事態は世界的な途轍もない混乱を招いた。中国はトランプ関税に対して報復関税で対抗し、貿易摩擦は激化した。株価は急落して世界同時株安の様相を呈し、アメリカ経済への信用は失われてアメリカ国債は一時投げ売り状態となった。トランプ関税がもたらすインフレや景気の悪化への危機感が拡大した。こうした内外からの強い反発を受けてトランプは、4月9日、関税発動からわずか半日で、上乗せ分の関税を90日間停止すると発表することを余儀なくされたのである。他方、中国に対しては関税をさらに引き上げるとし、米中関係の悪化が懸念される状況に立ち至っている。
歴代アメリカ大統領のタイプ
90日間の停止とは、トランプにとっては各国との交渉期間ということでもある。日本は主要国の先頭を切って、トランプ関税の見直しを求める交渉を開始した。赤澤亮正経済再生担当相が渡米してホワイトハウスでトランプやスコット・ベッセント財務長官と手始めの会談を行った。明らかになったのは、アメリカ側が、トランプ関税を取引材料にしながら、アメリカ製自動車の日本での販売促進、在日米軍の駐留経費負担の増額、対日貿易赤字の解消を日本に迫ろうとする思惑である。やはり私たちは、対米従属姿勢をどう変えていくかが問われているのだ。
トランプ関税ショックをめぐるニュースを注視しながら、歴代アメリカ大統領のタイプと、そこから外れるトランプの極端な例外性ということを思わずにはいられない。
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