横山やすし タクシーに同乗して事故に遭った“恐怖体験”

大谷 由里子 人材活性プロデューサー

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漫才師の横山(よこやま)やすし(1944ー1996)、通称「やっさん」は、1966(昭和41)年に西川きよしと組んだ「やすしきよし」で大人気に。一方、多くの事件で世間を騒がせ、アルコール性肝硬変のため51歳で死去。吉本興業で最後のマネージャーを務め、現在は人材活性プロデューサーの大谷由里子(おおたにゆりこ)さんがその思い出を綴った。

 美空ひばりさんの番組にゲスト出演したときのことです。演歌大好きの横山さんは大喜びだった。そのくせ「早めに出発しましょう」と約束していたのに、ホテルを出たのは、いつもよりギリギリ。道路が混んでいたら、スタジオまでは絶対に2時間はかかってしまう。そんなことは分かっているくせに、横山さんは例によって自分に都合のよいスケジュールを立てはるんです。

「大丈夫やろ、飛ばしたら絶対に1時間で着くはずや」

横山やすし ©文藝春秋

 だが案の定、道路は大渋滞。そして、例によって彼のイライラが始まる。こうなると、ターゲットは気の弱そうなタクシーの運転手さんに絞られる。横山さんは身を乗り出して、怒鳴り、そして走行指示を始めるんです。

「なにトロトロ走っとんのや。もっとさっさと走らんかい」

「そんなこと言われても、道路は混んでますから……」

「あほんだら、信号が赤のときに、さっと前に出て抜かすんや」

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source : 文藝春秋 1998年12月号

genre : エンタメ 芸能