英国の欧州連合(EU)離脱は、2020年1月末まで再度、延期されることになった。
ジョンソン政権とEUの執行機関である欧州委員会が10月末に合意したEU離脱(ブレグジット)案の施行に必要な関連法案は英議会で可決されたが、法案をスピード審議で成立させる日程案は否決された。結局、膠着(こうちやく)状態を打破するため、12月12日に解散総選挙となった。
この合意案は、①英国は移行期間後に、EUの関税同盟から離脱する②英領北アイルランドに限り、製品・農産品の基準やルールはEUに合わせる③北アイルランドと英本土との間の税関検査を、英・EUのFTA締結までに実施する、という内容である。
ブレグジットは、ポピュリズム政治の本質を余すところなく露呈させた。
まず、国民投票がいかに危うい賭けであるかということ。
国家の命運を決する決断を国民投票で下しても、持ち込まれた議会はそれを法律にできない。メイ前政権は「離脱」のどの選択肢を示しても議会の過半数を得ることができなかった。
しかも、国民投票の結果が今回のように52%対48%で「離脱」勝利という僅差だった場合、それを実現するのはさらに厄介である。「存続」派は、もっと頑張れば逆転させることができると巻き返す。一方、「離脱」派は再投票に持ち込まれる危機感から、何が何でも「離脱」を実現させようとする。かくして賛否半々のガチンコ状態が凝固し、深刻な国家分断をもたらす。
次に、ブレグジットをめぐる対決が党内を分断し、与野党ともに政党ガバナンスが効かなくなってしまったこと。
伝統的な支持層と利害関心層を背景としてきた政党、とくに2大政党構造が大きく変質している。製造業の後退とデジタル産業の進展、グローバル化、地球温暖化などに伴い「移民・難民」「環境」「アイデンティティ」などが大きな争点となるにつれ、保守党も労働党もそれらをめぐって分裂状態となり、政党ガバナンスが難しくなっているところに、ブレグジットの洗礼を浴びた。保守党の場合、移民反対を単一争点とする極右政党(UKIP。現ブレグジット党)の挑戦を受け、防衛上右にウィングを広げ、それがさらに党内分裂を深めた。
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source : 文藝春秋 2019年12月号