春優勝2回、夏準優勝2回の名将はどこで間違ったのか
107回目となる夏の全国高等学校野球選手権大会の開幕を4日後に控えた8月1日、私の携帯電話にPL学園高校(大阪)のOBから連絡があった。曰く、春3度の甲子園制覇、夏は4度の準優勝(出場は春夏合計で53回)を誇る広島の名門私立・広陵高校の野球部で集団暴行に遭った1年生部員(A君)がおり、その父親が広陵の実状を告発したいというので協力してほしいとの依頼だった。まずは話を聞きたいと返答すると、登録のない番号から連絡が入った。
「Aと申します。息子は今年1月に広陵の寮で、複数回に渡って集団暴行を受けました。野球部が抱える問題を公にしてもらいたいんです」
事件が起きたのは、1月20日。A君ともうひとりの1年生部員が寮内で禁止されているカップラーメンを口にしたことから始まる。それを先輩が見つけ、ふたりを口頭で注意した。翌21日、A君は複数の先輩部員から殴る蹴るの暴行を受けた。22日には2年生の先輩部員から呼び出されて、こんな言葉を投げかけられている。
「本当に反省しているのか? 反省しているなら便器舐めろ。○○(部員名)のちんこを舐めろ!」
さらに正座を強要されたA君は腹部を殴られる。腕でかばおうとするや、先輩に「正座の時の手はどこにするんや? 後ろやろ?」と言われ、少なくとも4名の先輩から腹を蹴られ続けた。
集団の暴力に耐えられなくなったA君は23日未明になって寮を脱走し、母親にSOSの連絡を入れた。「カップラーメン禁止」のルールは、一説に中井哲之監督(当時)も知らなかったという奇妙なものだが、その是非はともかく、最初にルールを破ったのはA君ではある。とはいえ、セクハラ暴言や複数人での暴行は、当然ながら許されるものではない。父親が続ける。
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