「ポスト石破レース」の号砲が鳴った。初の女性総理であれ、最年少首相であれ、次のリーダーが避けられないものが、デジタル時代のポピュリズムである。7月の参議院選挙では右派ポピュリズム政党の参政党が大躍進したが、その原動力はSNSや動画を駆使したデジタル戦略だ。米国や欧州でも同様に、インターネットが極端なポピュリスト政党の足場となっている。テクノロジー時代に、民主主義はどこへ向かうのか。台湾の初代デジタル発展大臣を務めたオードリー・タン氏(現無任所大使)に聞いた。(聞き手:ジャーナリスト 杉本りうこ)
SNSの根本的な機能不全
――日本では今夏、SNSを巧みに使った右派ポピュリズム政党が躍進しました。ネット空間は民主主義を不安定にしているのでしょうか。
オードリー 参院選の投開票が行われた直後、私はちょうどイベント登壇のために日本にいました。旧知の安野貴博さんの政党(チームみらい)が議席を得たことや、「日本人ファースト」を掲げる政党の躍進についてもリアルタイムで見ていました。
SNSは確かに極論を増幅させています。その作用はAI(人工知能)を使ったシミュレーションでも明らかです。オランダ・アムステルダム大学の研究者2人による論文「我々はソーシャルメディアを修復できるか?」は、AIを使ってSNS空間を再現しました。プログラムで作った機械のユーザーたちに人間のように投稿とフォロー、他者の投稿のリポスト(再投稿)をさせてみたところ、過激な投稿をするユーザーほど多くのリポストを獲得しました。

その結果、現実のSNSと同様に極論が拡散されました。偏ったアルゴリズムによる介入をしなくても、SNSでは自然発生的に極論が広がる根本的な機能不全があると明らかになったのです。
――SNSでは不可避的に極論が広がる。無力感を覚えてしまいます。
オードリー 極論が広がる理由は、リポストにあります。そもそも人はなぜリポストしたがるのか。リポストは人間に、社会学で言うところのボンディング・キャピタル(共通の背景や価値観を持つ人の間の強い結びつき)を「報酬」として与えるからです。リポストは同じ属性の人々に対して「私もあなたの仲間です」と証明する行為であり、リポストによって強い結びつきが体感できます。
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