中国共産党を告発した男

特集 習近平「失政」の証明

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「中国市場で勝っても最後は共産党にむしり取られる」 (聞き手 杉本りうこ・ジャーナリスト)

 私は1968年に上海で生まれ、9歳で両親とともに香港に移住し、米国で大学を卒業しました。中国には1990年代半ばに戻り、前妻・段偉紅(ホイットニー・ドュアン)とともに、不動産デベロッパーとして成功を収めました。私たちの資産額は一時、数千億円に上りました。

 しかし今は彼女と別れ、英国で暮らしています。彼女との間には一人息子がいて(米国生まれで米国籍)、彼の教育のために、オックスフォードに居を構えました。

「あなたはどこの国の人か」と問われたら、今の私は「無国籍だ」と答えざるを得ません。私のパスポートは香港のものですが、将来的には英国や米国、オーストラリアといった国の永住資格を得ることを検討しています。香港に足を踏み入れるのは危険ですから。ましてや中国には二度と戻りません。私は2021年、『私が陥った中国バブルの罠 レッド・ルーレット』(邦訳は2022年、草思社刊)という本で、中国共産党最高幹部の金と権力をめぐる内幕を暴露したからです。

デズモンド・シャム氏 Ⓒ文藝春秋

 私とホイットニーは、温家宝元総理の家族の巨額蓄財(27億ドル)を手助けしました。中国では政治家に利益を供与する企業家を「白手套(白い手袋)」と呼びます。私たち夫婦はまさに温家宝一家のカネに塗れた手を隠す白手袋でした。さらに私の暴露本は、元総理一家だけでなく、複数の共産党最高幹部に関わるものでした。このような暴露を党は決して許しません。この本を出すことで、私は一生、共産党から自分と家族の身を守らざるを得なくなりました。

 なぜそんなリスクを冒してまで暴露をしたのか。それは、前妻ホイットニーが2017年9月に共産党によって拘束され、その後、4年にわたり行方不明となったからです。

 ホイットニーは温家宝夫人の張培莉に食い込み、平安保険(ピンアン)の未公開株の取得などで温一家に巨額の富をもたらしました。温家宝自身は蓄財にほとんど直接関わっていなかったのですが、夫人にとってホイットニーは、実の娘以上に信頼できる存在でした。数百億円相当の利益をもたらす取引を契約書もかわさず、口頭の信頼ベースで行ってきた仲だったのです。

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source : 文藝春秋 2024年11月号

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