習近平の「国家の安全」に警戒せよ

短期集中連載 最終回

垂 秀夫 前駐中国大使・立命館大学教授

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新たな「五反運動」で強権政治を強めている(聞き手 城山英巳・北海道大学大学院教授)

「垂秀夫大使は台湾にとって長年の良き友人であり、台日関係深化の重要な立役者でもあります」

 5月9日、台湾の蔡英文総統は総統府で行われた「大綬景星勲章」授与式で、とても立派な勲章を私の肩に掛けてくれました。そしてスピーチでは冒頭のように語りかけ、日台間の青少年交流の推進など、私が日台関係強化のために力を入れてきた様々な施策を紹介してくれました。

 中でも、「垂さんによる先駆的な仕事だった」と評価してくれたのが、日本人高校生による台湾への修学旅行の増加です。きっかけは、2003年に台湾での大使館に相当する「交流協会」台北事務所を離任する際に、友人の邱義仁氏(官房長官に当たる総統府秘書長を務めた)から「日本からの修学旅行生を増やしたい」と相談されたことでした。邱氏は、陳水扁総統時代だけでなく、後に蔡氏が総統に就任してからも、一貫して外交・安保政策に大きな影響力を持っていた人物です。日台関係に寄与する提案でしたから、どうにか実現したいと考えていました。

 中国課長に就任した後、私は大阪出身ですから、友人である府立高校の校長先生に台湾への修学旅行について相談し、実現をはかりました。台湾当局にお願いして、台湾に修学旅行に行く高校に対応する受け入れ校を指定してもらいました。修学旅行の直前には、私自身が大阪に行って台湾についての講義を行いました。当初は「公立学校が台湾に修学旅行?」という反応もありましたが、メディアの地方版で私の講義のことが取り上げられると、徐々に台湾を選ぶ学校が増えてきました。15年には海外修学旅行先の第1位が台湾になりました。あわせて、台湾の高校生も日本を訪れるようになりました。

 蔡氏も19年に総統府を訪れた日本の高校生と面会したことがあり、授与式ではその際の思い出話も紹介してくれました。

勲章授与式にて(蔡英文氏のXより)

 私からの返礼のスピーチでは、交流協会で働いていた時代のエピソードを中国語で披露しました。初めて赴任した直後に厳しい本音をぶつけられた苦い思い出です。ある時、李登輝元総統の側近で、後に対日交流窓口「亜東関係協会」(現・台湾日本関係協会)の会長を務めた彭栄次氏の夫人から、「あなたの中国語はとても上手ですが、大陸の訛りがありますから、親近感がわきません」とハッキリ言われたのです。たしかに私は中国大陸で中国語を学びましたから、その指摘は当たっており、ドキッとさせられました。

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source : 文藝春秋 2024年9月号

genre : ニュース 政治 中国