一筋縄ではいかない最高指導者たちの素顔(聞き手 城山英巳・北海道大学大学院教授)
「一生に一度しかない中国での信任状捧呈式で、こんな扱いをされるのはとても残念」
2021年4月14日夕刻、習近平国家主席への謁見のための列で、私の前に並んでいた欧州某国の大使は不満を露わにしました。北京の人民大会堂で行われた、信任状捧呈式のときです。新型コロナウイルスの影響で大幅に延期され、私は着任から5カ月後でしたが、中には1年以上待たされた大使もいました。しかも、一対一ではなく29カ国を一堂に集めての開催。私も、各国を代表する大使への扱いとしては、失礼ではないかと感じたものです。
習氏は明らかにコロナの感染を恐れている様子でした。大きなホールに立った習氏は、マスクをぴっちりと着用して表情は窺えず、相当の距離を取って一人ひとりの大使とわずかの言葉を交わすだけでした。
私は天皇陛下からのお言葉をいただいていたので、事前に用意されていた芳名帳に記帳しました。しかし、残念なことに事前に準備していた菅義偉総理からのメッセージは伝えられませんでした。あまりにも大勢の大使がいたため、時間がほとんどなかったのです。
その後の習氏の挨拶は、「中国人民は従来から友誼を大切にし……」といった形式的なもので、大使たちの心を掴むものではありません。むしろ私には、習氏の身体がゆっくりと揺れているように見えたのが印象的でした。期待外れの信任状捧呈式で、どっと疲れが出たので、その後、サウナに行ってマッサージを受けたことをよく覚えています。
昨年12月に外務省を退官した垂秀夫氏(63)。40年弱の外交官生活の中で、中国での勤務は20年近くに及ぶ。今回は、一筋縄ではいかない中国の歴代指導者の意外な素顔を明かす。
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source : 文藝春秋 2024年8月号