内部機密を取るために「バックチャンネル」を開拓せよ(聞き手 城山英巳・北海道大学大学院教授)
「中国が突きつける挑戦の規模と範囲は、これまでに経験したことのないような米外交の試練となる」
2022年5月26日、米国のブリンケン国務長官は対中政策スピーチを発表し、その中で、国務省内に中国に関する安全保障、経済などの専門家を集めた部署「チャイナ・ハウス」を設立することを表明しました。
米国だけではありません。ドイツも昨年7月、初めて中国戦略を策定し、分野横断的に中国問題の専門性を強化することの必要性を指摘しました。さらに英国も昨年4月、クレバリー外相が対中政策スピーチを行い、中国専門家の増強と共に、関連予算の倍増に言及しました。大国化した中国に関する専門家の養成と情報収集力の強化は、世界的な潮流となっています。米英独はその必要性を十分に理解したうえで、対中戦略を日々更新しているのです。
ブリンケン国務長官と同じ危機感は、中国大使を務めている間、私も肌身で感じていました。ただ、各国に比べて日本の取り組みは不十分なだけでなく、時には逆行していると言わざるを得ません。政府内の中国語研修組「チャイナスクール」を中心として、中国専門家の養成と強化が求められているのに、チャイナスクールというだけで、社会で批判される事態はいかがなものでしょうか。いま課長クラス前後の、若い世代の意識は変わってきており、彼らの多くは国益に基づいてしっかりと中国と向き合っています。
40年弱に及ぶ外交官生活で、私がとりわけ力を入れてきたのが情報収集でした。書記官として赴任していた若手の頃は、国益を論ずるよりもむしろ中国に関する情報を集めることが、自分の仕事の全てだと考えていたほどです。
中国にアプローチする際、警句として常に念頭に置いていたのが、「群盲、象を撫でる」です。この言葉は、1985年の入省直後、チャイナスクールの先輩から最初に教わりました。目の不自由な方がどこを撫でるかによって、象に対する見方が変わり、全体が掴めないということですが、その先輩は中国のどこを切り取るかで中国像も変わってくると言いたかったのだと思います。
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