私が死んでもドン・キホーテは生きていく
2023年12月、小細胞肺がんを患っていることが判明しました。それまで風邪ひとつひかない、頑強そのものだった私にとって、まさに青天の霹靂。ドクターから「余命がウィークリー単位ということはないですから」と言われて大きなショックを受け、マンスリー単位ではあの世へ逝ってしまうのか、と大きな不安に駆られました。
幸運なことに抗がん剤が私の体に合ったようで、ドクターから「今まで見たことがない」と言われるほど最近は安定しています。ただ、脳に転移していることもあり、5年後には100人中98.5人は死んでしまう確率にあることも事実です。
だから、生きているうちに社会に恩返しがしたい、できるかぎり体験を伝えたいと考えています。今回は、これからの日本を担う若きビジネスパーソンに向けて、私が働きながら学んできたこと、秘かに心がけてきたことをお伝えします。
ドン・キホーテは1989年、安田隆夫氏が東京都府中市に第1号店をオープンした総合ディスカウントストア。2025年現在、売上高2兆円を超え、国内655店舗、世界に124店舗のリテール事業を構えるグループ企業へと成長を遂げた。
▼第一条 「贅沢病」の罠
今年で私は、76歳になりました。もし50歳若返り、20代の若者になったら、まず今の時代に生まれてきたことに感謝します。ITやAIなど胸躍る変化がいっぱいある時代に生まれて、こんなに面白いことはない、と。人間関係の悩みなんて正直どうでもよくなってしまうくらい、明るい未来を想像してしまいます。

これまでの歴史を振り返ってみてください。人口のほとんどが農民だった時代、田植えや収穫の時期は共同作業で、朝早くから夜遅くまで一生懸命働くしかない。仲の良い奴も悪い奴もいるけれど、「あいつと会うのが嫌だから、今日は田植えをサボろう」なんて言えますか? そんな人は、飢え死にするだけです。仕事に全力投球しなくても好きな趣味に没頭できるのは、大金持ちか公家くらいしかいなかった。
有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。
記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!
初回登録は初月300円
月額プラン
初回登録は初月300円・1ヶ月更新
1,200円/月
初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。
年額プラン
10,800円一括払い・1年更新
900円/月
1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き
電子版+雑誌プラン
18,000円一括払い・1年更新
1,500円/月
※1年分一括のお支払いとなります
※トートバッグ付き
有料会員になると…
日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事が読み放題!
- 最新記事が発売前に読める
- 編集長による記事解説ニュースレターを配信
- 過去10年7,000本以上の記事アーカイブが読み放題
- 塩野七生・藤原正彦…「名物連載」も一気に読める
- 電子版オリジナル記事が読める
source : 文藝春秋 2025年11月号

