「素朴な疑問」というけれど……
この本を読むなら覚悟した方がいい。突然頭の中で、ある声が聞こえてくるようになる。「それは 理科ナリ!!」という声だ。少なくとも私はそうなってしまった。でも困っていない。むしろ面白い。
著者(夫婦)は自らを理系イラストレーターと名乗っている。漫画だし、総ルビだし、簡単そうだ。前書きのところにも「本書における理科の内容は、基礎的なものがほとんどなので『専門的なことを学びたい』という方には少し物足りないかもしれません。どちらかというと『理科はあまり興味が持てないなぁ』とか、『理科ってちょっと難しいなぁ』という小中学生におすすめです」と書いてある。

しかし私は読み終わってから「へへぇ」と頭を下げた。「私は知ったかぶりでおりました。当たり前という言葉で片付け、深く考えることもなく、この本に取り上げられている、その言葉やあの現象もムードで使っておりました」と白状する。
身のまわりの素朴な疑問という言葉を私たちはよく使うけど、そもそも、疑問そのものを持ったかどうかから問われているのである。不思議を不思議とも思わないこと、なんとなく知った気分でいることのなんと多いことか。
ポコ太という、勉強よりもお笑い好きの主人公が、夏休みにひょんな出来事からある特殊能力?を手に入れ、「どうしてだろう」と思ったこと(理科分野に限る)が次々に明らかになるという設定。のっけのエピソードは「さびた空き缶」。「どうやったらコレがここまでさびるんだよ」と思う。と同時に「それは 理科ナリ!!」の声がして、ついに開幕!
なぜさびるのか? 酸化するからだ。ここまでは私も言えた。が、それ以上のことは「へえ、そうだったんだ」「なるほどねえ」の連続であった。

イオン飲料ってよく聞くけど、それって何? そもそもイオンって何? もし聞かれたら私は説明できない。なぜ船が海に浮くのかも正直に言うとちゃんと説明できない。自転車をこぐとライトがつくのも、なぜいろんな雲ができるのかも明快な説明はできない。私はすでに小中学生ではないけど、ちゃんと理解しているわけではないことがこれまた次々に明らかになる。子どもの頃リトマス試験紙で実験した記憶のある酸性やアルカリ性の度合いを示す値の「㏗」を「ペーハー」と読んでいた昭和世代の私は、それを今は「ピーエッチ」と読むことも、この本で初めて知った。すべては動いているのだ。特に科学は。……衝撃である。
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