文在寅政権の反日的な挙動が続く中、ソウル市の仁憲(インホン)高校の生徒が、「学校から反日行為を強要された」として抗議するという異例の事態が発生した。同校の生徒150人はソウル市教育庁に「学校の監査」を求める請願書を提出。さらには、生徒らが学校の「反日教育」を批判する会見まで開き、韓国内でも大きな話題となった。
今回、同校3年生で、生徒たちが立ち上げた団体「仁憲高校学生守護連合」の代表である金花浪君とスポークスマンの崔仁鎬君の2人が初めて日本メディアの取材に応じた。「日本をひたすら貶める授業や行事──。僕らはもう耐えられない!」と、弁護士同席のもと、反日教育の実態を赤裸々に語った。
反日強要は生徒の人権無視だ
崔 あの光景には目を疑いました。
「安倍自民党は滅亡する!」
「日本の経済侵略に反対する!」
10月17日、僕たちの高校で開かれたマラソン大会で、生徒たちが口々にこう叫び始めたのです。断っておきますが、これは生徒が自発的にやった行動ではありません。先生からの強要です。反日スローガンの書かれたポスターを持たされ、大声で叫べと言われ、従わざるをえなかったのです。
金 マラソン大会は1、2年生が参加した行事ですが、疑問に感じた後輩が動画を撮影していて、僕たちに相談をしてきたのです。動画を見た僕と仁鎬はすぐに抗議の声を上げることを決意しました。
僕たちが通う仁憲高校では、反日行為の強要が日常的に行われてきました。先生たちは社会通念上、決して許されないことを言っても、それが反日を煽るものであれば、全て正しい教育であるかのように振る舞ってきた。仁憲高校は教師の支配下にある、「反日マシーン養成所」なのです。ここで僕たちが声を上げなければ、被害を受ける後輩たちがどんどん増えてしまいます。
反日スローガンを叫ばされたマラソン大会
崔 仁憲高校は公立高校です。日本も同じだと思いますが、韓国では法律によって、教育現場の政治的中立が定められています。反日行為を強要するのは、生徒の人権を無視した暴挙です。
元々、僕と花浪は、男性と女性が本当の意味で手を取り合って生きていくための男女共生サークルを校内で運営していました。その活動を通じて、日頃から様々な社会問題に関心を持っていました。そうしたこともあって、マラソン大会での反日行為の強要は許しがたいものに感じられたのです。
反日教育で日本嫌いに
金 それですぐに、「仁憲高校学生守護連合」を立ち上げました。校門前で記者会見を開いたところ、メディアやSNS上で大きな反響がありました。しばしば反日的な教育が行われているとされる韓国にあっても、仁憲高校の教育はそれだけ異常だったのでしょう。
正直に言えば、僕も元々、日本のことが好きではありませんでしたし、もっといえば敵対感情を持っていました。長年受けてきた、反日教育の影響のせいかもしれません。
金君
崔 そうだったの? でも、花浪は日本のアニメが好きだし、少しは日本語がわかるよね。
金 本格的に勉強したことはないけど、「ワンピース」や「ブリーチ」など、「少年ジャンプ」のアニメをよく観ていたから少し覚えたんだよ。高校に入って仁鎬とサークル活動をするようになってからは、いろんな社会問題を勉強するようになって、日本を嫌いではなくなったし、ましてや敵だと考える必要もないと思うようになりました。
崔 僕はずっと日本のことが好きだったけどな。これまで3回旅行したことがあって、温泉は気持ちいいし、ポケモンにもハマっていたので、グッズショップの「ポケモンセンター」に行けたときはすごく嬉しかった。だから余計に、反日を強要されることに嫌気がさしたんです。
金 最近、韓日関係が悪くなったことで、日本でも、韓国のことが好きではない人が増えていると聞きました。ただ、僕らは隣同士の国ですから仲良くした方がいいに決まっている。韓国にも僕たちのように、韓日関係を改善したいと願っている人や、いきすぎた反日行為に眉をひそめている人はたくさんいます。それを知ってもらいたいと思って、今回、日本メディアの取材を受けることにしたのです。
「日本は敵、北朝鮮は友人」
崔 問題のあったマラソン大会は毎年恒例の学校行事ですが、今回は、準備段階から様子がおかしかった。本番の1週間ほど前になると、各クラスの担任から白いポスターを渡され、「反日スローガンを書いてこい」と指示されたのです。それで、「NO安倍」や「日本は謝罪せよ」といった政治的なメッセージから、「NOユニクロ」など、不買運動を煽るスローガンが書かれました。これに不満を抱いた生徒が、反日に異を唱える文言をポスターに書いたところ、職員室に呼び出されて、「お前、正気じゃないのか!」と怒鳴りつけられたそうです。
崔君
金 僕は学校側が事前に準備したマラソン大会の企画書を見たけど、そこには「安倍自民党を糾弾する」など、ポスターに書くべき例文が示されていました。生徒はそれに沿って、しぶしぶ反日ポスターを作ったのです。
崔 大会当日になると、生徒はまず、校庭に集められました。すると先生は、各クラスの委員と副委員に準備したポスターを持たせて、朝礼台の上に呼び出しました。まず、自ら反日スローガンを繰り返すと、今度は生徒にマイクを渡し、反日スローガンを叫ばせたのです。
金 最初に動画を見たときは唖然としましたよ。これが僕たちの高校で起こっていることなのか、と。
崔 いざマラソンが始まると、今度は反日スローガンを体に貼りつけて走れといいます。さすがに生徒も嫌がったのですが、先生は、「反日スローガンを貼って走らなければ、ゴールしても完走とは認めない」と。大勢の生徒が、反日スローガンを貼って汗だくになりながら走る姿はあまりに異様です。
金 翌日には、フェイスブックで「仁憲高校学生守護連合」のアカウントを立ち上げました。動画をアップして抗議すると、全校生徒500人のうち150人くらいから賛同の声が寄せられました。すると、出るわ、出るわ……。マラソン大会以外にも、反日行為を強要された事例がたくさんあったのです。そのほとんどは授業の場で、日常的に行われてきたものでした。そこでまずは、ほかの生徒の被害事例をまとめることにしたのです。
崔 とくに被害が多かったのは歴史の授業です。これは1年生の例ですが、授業が始まると、教科書は使わずに、「日常生活で使われている日本語を、韓国語で言い換えるにはどうすればいいか」と書かれたプリントが配られるそうです。韓国では植民地時代の名残りで、いまでも、「勝負」や「突き出し」など、日本語由来の言葉が使われています。これらは違和感なく日常生活に根付いているのですが、反日教師にとっては、我慢がならないのでしょう。
金 歴史の先生たちからは、「日本は敵で、北朝鮮は友人だ」と考えている様子がありありと感じられました。「日本は昔の軍国主義が頭を離れず、世界を征服したがっている。アメリカと日本は韓半島を分断させ、南北統一されることを妨害しているんだ」といったことを平気で言いますから。ありえない妄想ですよ。
「不買運動やってるか?」
崔 2019年7月に日本が対韓輸出規制を行って韓日関係がどんどん悪くなると、反日行為の強要もエスカレートしてきました。
僕が国語の授業が始まるのを待っていると、教室に入ってきた先生が開口1番、「お前ら、ちゃんと日本製品の不買運動をやってるか?」と聞いてきたこともあります。その先生は以前から個人的に不買運動を実践してきたそうですから、生徒に対しても、「当然、やるべきだ」と圧力をかけてきたわけです。
金 勉強を教える気がないのかな……。教室の雰囲気はどうだった?
崔 迷惑そうに聞いている生徒もいたけど、やっぱり先生の影響力は大きいからね。よくわかっていない生徒は、「私もユニクロを買うのをやめます」と言っていたよ。ほかにも、どれくらい日本製品の不買を実践したか、1人ひとりに発表させる先生もいました。
あまりにも反日の話ばかりされるから、生徒もピリピリしてしまいました。例えば、「この間、日本に行って、ユニクロで買い物をしてきたんだ」と土産話をしただけで、友達から、「なんでこの時期にそんな話をするんだよ!」と非難される始末。軽々しく日本の話をできない雰囲気になっているんです。
金 ユニクロは日本企業の代名詞としてよく批判されることがあるけど、ユニクロ側に問題があるとは思えません。ちょっと反日感情がいきすぎてる気がするけど。
崔 だけど、ユニクロを毛嫌いしてる子なんて少数じゃないかな。僕はユニクロで買い物をしたことがないけど、いい商品があれば着ると思う。いまは好みの服が売ってないだけで(笑)。
金 安倍首相だってそうだよ。「安倍滅びろ」なんて言うけど、僕の周りで心の底からそんなことを思っている子なんていませんよ。
崔 日本人ではないんだから、安倍政権が良いか悪いかなんて、よくわからないよね。
金 そうそう、具体的にどんな政策を行っているのか知らないし。日本の国民から支持されたから総理大臣に選ばれたんだろうなあと想像している程度です。
崔 僕らが記者会見を開いたのはマラソン大会から6日後の10月23日です。それまで多くの証言が集まってきたので自信を持っていました。ところが、会見が近付くに連れて、少しずつ離脱する生徒が出てしまったんです。みんな、家族から「会見をして顔が知られると、後で先生たちから嫌がらせをされてしまうのではないか」と反対されていましたから。僕も、両親からは「お前が傷つくことになるぞ。記者会見はやめろ」と言われていました。
金 どうせ反対されると思ったから、僕はずっと家族には内緒にしていたよ(笑)。
家族の反対よりも、他の生徒から批判される方が辛かったな。教室で会見の準備をしていたら、同じクラスの女の子から、「学生守護連合の活動は間違っているんじゃないの!?」と大声で非難されたこともあった。僕らを支持してくれる女の子が集団いじめに遭ったこともありました。
でも、1番こたえたのは、昔、付き合っていた彼女から批判されたこと。直接的な表現ではないけど、「彼はかわいそうな子なのよ」って哀れむようなことを言われて……。
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source : 文藝春秋 2020年1月号