昭和43(1968)年の創刊以来、数々の大ヒット漫画を世に送り出した「週刊少年ジャンプ」。初代編集長の長野規(ただす、1926〜2001)を、第4代編集長・後藤広喜氏が振り返った。
長野規さんは情熱の人であり、冷静な判断力と分析力を持つ方でした。
ジャンプが創刊された昭和43年は、9年前から発行していた週刊少年マガジンと週刊少年サンデーの人気が定着。ジャンプも後発ながら人気漫画家を中心にスタートさせたかったようですが軒並み断られ、新人の発掘・育成に舵を切ります。すると、当時新人だった永井豪先生の『ハレンチ学園』、本宮ひろ志先生の『男一匹ガキ大将』がヒット。「新人漫画賞」の創設と相まってジャンプの方向性が確立していきました。
長野さんは毎週ライバル誌の定価や連載作品をノートにまとめていました。ジャンプ創刊2年後の昭和45年、新入社員として編集部に配属された私を含めた全員が、他誌をくまなく読んでいないと怒鳴られた。要するに、新連載や新人をチェックし、「少年漫画誌の流れを掴め」と教育をしてくれていたのです。
それは「読者を知る」ことにも繋がります。長野さんは読者アンケートをとても大切にしていました。編集方針である「友情・努力・勝利」も、ここから生まれました。「心温まる言葉」「大切だと思っていること」「一番嬉しい時」といった趣旨のアンケートを取ると、「友情」「努力」「勝利」の回答が最も多かった。
少年たちの声を基に、向上心を失わず諦めない読者像を想定し、ジャンプの「熱血硬派路線」や「対決漫画路線」が形成され、ヒット作が生まれていったのです。
「頭の中からポケットの中身まで、読者の全部を知れ」。長野さんは常々そう檄を飛ばしていました。アンケートの設問は編集者が持ち回りで担当し、編集長のOKを貰えなければ採用されない。連載作品の“存続競争”も激しく、毎週の人気順位に編集者も漫画家も一喜一憂していました。競争を勝ち抜かないと長期連載は獲得できなかったのです。
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