竹内 均 参考書から啓発本まで

水谷 仁 宇宙科学研究所名誉教授
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昭和56(1981)年に自ら創刊した科学雑誌「ニュートン」の編集長を83歳で亡くなるまで務めた、東京大学名誉教授の竹内均(1920〜2004)。一番弟子で同誌編集長を継いだ水谷仁氏が恩師を語る。

 昭和のテレビで人気の科学者といえば、竹内均先生を思い浮かべる方も多いでしょう。大地震やアポロ月面着陸を解説し、教育番組や受験講座も長年つづけました。

 著書も多数あり、生涯に400冊以上の本を書きました。科学の入門書、『物理の傾向と対策』などの受験参考書、哲学、宗教、自己啓発……ジャンルを問わず新刊が出ていたので、何の専門家かを知らずに読んだ方がいるかもしれません。

 ひと言で紹介すれば、竹内均は偉大な地球物理学者でした。

竹内均 Ⓒ文藝春秋

 昭和16(1941)年に東京帝大理学部地球物理学科に入学。成績優秀で「特別大学院」の第1回生に選ばれました。

 初期の研究テーマは地球潮汐。海水の満ち干と同様に、地球そのものが月と太陽の引力によって変形していることの証明です。まだ電子計算機がないため、手回し式の計算機を朝から晩まで回したといいます。疎開中も帰省中も回しつづけて4年、地球全体が1日に2回、30センチほど伸縮していることを理論的に証明し、戦後に博士号を得ました。この論文が米国の学術誌に掲載されたことで、先生は英国のケンブリッジ大、米国のカリフォルニア工科大やコロンビア大に招かれて研究に参加。国際的な実績を重ねます。

 私が竹内研究室に入ったのは、先生が東大理学部の教授となった昭和38(1963)年。山登りが好きな私は、東大で気象学を勉強し、卒業後は気象台に勤めようと思っていましたが、竹内先生にスカウトされた。「経済的な心配はいりません。私みたいに本を書けばいいですから。それに研究が進めば外国に行けるようになるよ」と説得されました。

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source : 文藝春秋 2025年1月号

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