暴走族、喧嘩、ツッパリ…『東京リベンジャーズ』1970年代の原点

ヤンキー漫画と日本人 第2回

加山 竜司 フリーライター

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公開中の映画『東京リベンジャーズ2』が、前後編合わせて興行収入42億円を突破した。2021年に45億円を突破した前作に迫る勢いだ。原作コミックスは、全31巻の累計発行部数が7000万部を超える歴史的なベストセラー。なぜこの現代に、“特攻服にリーゼント”という昭和的ヤンキーが主人公のコンテンツが、これほどの大ヒットを記録しているのか。その答えにライターの加山氏が迫る連載「ヤンキー漫画と日本人」第2回。(第1回を読む)

「男らしくて純情で」

 ヤンキーマンガや不良マンガが描かれるようになった文化的背景には、60年代に流行した東映の任侠映画がある。鶴田浩二主演の「博徒シリーズ」(1964~1971年)、高倉健主演の「日本俠客伝シリーズ」(1964~1971年)などがその代表例だ。

 これらの任侠映画は「チョンマゲを取った時代劇」とも揶揄されたように、わかりやすい勧善懲悪のストーリーであり、主人公は社会の正道から外れてはいるものの、義理と人情に厚いヒーローとして描かれていた。それは現実世界のヤクザとはかけ離れた、フィクショナルな任侠像であった。

 このような任侠映画の世界をマンガに持ち込んだのが、番長マンガだ。ヤクザを番長に置き換えて、学園を舞台に「義理と人情の世界」を描き出してみせた。その嚆矢となったのが、1967年の『夕やけ番長』(原作:梶原一騎、作画:荘司としお)や1968年の『男一匹ガキ大将』(本宮ひろ志)である。

 映画業界ではブームに乗じて数々の任侠映画が制作され、やがて深作欣二監督がドキュメンタリータッチを取り入れて、『仁義なき戦い』(1973年)が誕生する。実録もの路線でリアリティを追求し、いわゆる様式美的な殺陣の美学とは一線を画す殺伐とした暴力描写を実現し、それにより従前の任侠映画の虚構性が剥ぎ取られてしまった。任侠ヒーローなど現実には存在せず、実際の暴力団は反社会的勢力で恐ろしい存在なのだ、と。

 しかし、番長マンガのジャンルにおいては、任侠映画を祖とする硬派でバンカラなヒーロー像が、理想的な主人公の一形態として受け継がれていった。番長マンガの主人公は不良だが「男らしくて純情で」という、まるで灰田勝彦の『野球小僧』の歌詞に出てくるようなロールモデルが存置されたのである。

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