オラ生まれっ放しの声優

日本の顔 インタビュー

野沢 雅子 声優
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声という「命」を吹き込む

(野沢雅子さんが登場したグラビア「日本の顔」もぜひご覧下さい)

「マコさん、おかしいよ」

 この話をすると、みんなにそう言われるから最近は黙っているんですけど……私、空を飛ぶ夢をよく見るんです。ダーーッと、かなりのスピードで飛んでますので、向こうから鳥がきたり、飛行機がきたりして、危ない。だからその下をうまくガガーッと潜り抜けて、「うまいこと抜けたな」なんて思うの。「ドラゴンボール」の孫悟空になりきって「舞空術」を夢の中でやっているんでしょうね。長年、同じ夢を見ているから、かなりの腕前。この秋に88歳になるようですけど、そんな調子で大人になりきれず、生まれっ放しみたいに生きてきました。

「またな!」のポーズでパシャリ ©文藝春秋

 政治や、経済や、常識的な大人たちの会話を聞いていると、感心しちゃいます。「すごいな、みんな。こんなこと考えながら生きてるんだ」って。気取ったところへ行くと、無口になります。どう喋ったらいいか分からない。自分の気持ちや言いたいことを、喉元に上がるまでに整えているうちに、大人の会話はドンドン先へ進んでしまうから、困っちゃいますね(笑)。

 声優の仕事は、神様が私にくれた天職。大好きなことをしているからか、ちっとも疲れません。「あ〜、今日は疲れた」なんて、今まで一度だって思ったことがありません。体調を崩して仕事を休んだこともないんですよ。これまでに演じた「銀河鉄道999」の鉄郎、「ゲゲゲの鬼太郎」の鬼太郎、「ドラゴンボール」の悟空たちは、我が子というより、分身みたいな存在。とくに悟空は、アニメが始まった1986年からもう40年近くの付き合いですから、実はときどき2人で会話もします。「この人たち何言ってるの?」と悟空に聞かれると「何だっていいじゃないのよ」と返したりして。いつだって傍にいてくれます。

“愛情過多”で育った

 私は1936年、東京の日暮里で生まれた下町っ子です。父は山水画家の野沢蓼洲(りょうしゅう)、母の鶴は専業主婦でしたが、なんでも、大名家の娘だったとか。「そんなもの、今の時代なんの足しにもならない」と、自ら話すことはありませんでしたが、いつも着物を崩さず、「さようでございます」が口癖の凜々しい女性でした。父が48歳、母が51歳と、高齢で生まれたひとり娘。それはもう“愛情過多”で大切に育てられました。

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source : 文藝春秋 2024年7月号

genre : エンタメ 芸能 テレビ・ラジオ ライフスタイル