赦しの時

第165回

中野 京子 作家・ドイツ文学者

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エンタメ アート

一枚の名画をのぞき込んでみると……

 

✓見えてきたのは「足裏」

現代の健康ブームにおいては、裸足で歩くことが推奨されていたりする。だが何ごとも程度というものがあることを、この無惨な足裏が示している。長時間、いや何日も何日も舗装されていないデコボコ道を歩き続ければ、見てのとおり擦り傷、切り傷、血豆だらけになってしまう。それでもなおこの足の持ち主は、歩くのをやめなかった。そうまでして彼が目指したのはどこだったのか? はたして彼は報われたのだろうか……?

 


 

赦しの時

『放蕩息子の帰還』

1668年頃、油彩、262×205cm、エルミタージュ美術館 / 写真提供 Bridgeman Images/amanaimages

 本作は、新約聖書の「ルカ伝」に記されたエピソードをもとにしている。それによれば――

 2人の息子をもつ父がいた。彼はそれぞれに財産を分与したが、弟の方はその金を持って遠方へ去る。月日はめぐり、弟は各地で放蕩三昧の末一文無しとなって家へもどった。父は温かく迎え、肥えた仔牛を屠って歓待した。

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source : 文藝春秋 2026年5月号

genre : エンタメ アート