一枚の名画をのぞき込んでみると……

✓見えてきたのは「擬人像」
骨ばった両手で髪をかきむしり、眉をひそめ、虚空を見つめ、大きく口を開けて悲鳴とも軋み音ともつかぬ音声を発するこの醜い老女は、ご想像どおり、「嫉妬」の擬人像である。妬み嫉みが心を捩じ切り、理性を蝕み、ひいては外見までも崩壊させてしまう恐ろしさを、いにしえから画家はこのように老いた女性を使って表現してきたのである。けしからん。男のほうがはるかに嫉妬深いというのに……。まあ、男じゃ、絵にならないのかもしれないが。
メディチ家の贈り物

『愛の寓意』
1545年頃、油彩、146.1×116.2cm、ロンドン・ナショナル・ギャラリー / 写真提供 Alamy Stock Photo/amanaimages
これはメディチ家出身のフィレンツェ大公コジモ1世からフランスの国王フランソワ1世に贈呈された、ブロンツィーノの代表作。
ブロンツィーノはコジモ1世の宮廷画家だった。冷たく知的で、洗練された画風を特徴とし、この『愛の寓意』自体が冷ややかでエロティックで謎めいた美女そのものだ。
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