一枚の名画をのぞき込んでみると……

✓見えてきたのは「民族帽」
コアフと呼ばれるこの帽子は、フランスのブルターニュなどで見られる民族衣装の被りものの一つ。基本は固く糊付けした小さな頭巾だが、それぞれ町ごとにデザインが異なるというから面白い。本作では白いレースのリボンを長く垂らしている。場合によっては頭巾を折り曲げたり、リボンは垂らさず結んだりするらしい。日本でいえば、祭りの時のさまざまな花笠がそれに近いかもしれない。
信心深さが見せた幻影

『説教のあとの幻影(ヤコブと天使の格闘)』
1888年、油彩、72.2×91cm、スコットランド国立美術館 / 写真提供 alamy/amanaimages
「ヤコブと天使の格闘」というテーマは、多くの画家によって描かれてきた。特にドラクロワ作品が有名だが、ゴーギャンによる本作も彼の代表作の一つとしてよく知られている。
旧約聖書によれば──
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source : 文藝春秋 2025年7月号

