税関吏ルソー

第157回

中野 京子 作家・ドイツ文学者
エンタメ アート

一枚の名画をのぞき込んでみると……

 

✓見えてきたのは「サイコーにエラソー」

大人の男の究極のおしゃれたる、ヒゲ。何しろ生える場所によって髯、髭、鬚と、漢字まで変わる。とりわけ先端を伸ばして上へ跳ね上げたこの口髭は「カイゼル髭」といって、エラソー度ナンバーワンと言えよう。カイゼルはドイツ語の「Kaiser」、つまり「皇帝」という意味だ。最後のドイツ皇帝ヴィルヘルム2世がこのスタイルの髭を生やし、それが各国で(庶民にまで)流行したことから、この名前が定着した。

 


 

税関吏ルソー

『婚礼』

1905年、油彩、163×114cm、オランジュリー美術館 / 写真提供 Alamy Stock Photo/amanaimages

 本作はルソーが絵葉書か古い写真をもとに、想像で描いたと言われている。その架空の結婚式に、ルソー本人もちゃっかり来賓として登場している。最後列、右から2人目のカイゼル髭がそうだ。

 紺碧の空の下、不思議な木々には不思議な葉が不思議な状態で茂る。左の並木は葉が濃く、右の並木は裸形に近い。

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source : 文藝春秋 2025年9月号

genre : エンタメ アート