【イベントレポート】企業法務進化論 第四弾 「法務の再発明」-リスクと機会の両輪で経営をドライブする法務の未来像

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〇開催趣旨

企業法務を取り巻く環境は、2025年に入りさらなる複雑性とスピードを帯びています。グローバル規制の高度化、データ・AI領域の法整備の急進、サイバーリスクの拡張など、企業活動全体を取り巻くリスクの「質」も「量」も転換点を迎えています。加えて、生成AI・リーガルテックの実用化が本格化し、契約審査、ナレッジ運用、法務問い合わせ対応、リスク可視化といった領域で、リーガルオペレーションの最適化が中心テーマとなりました。

これまで“属人的に回していた法務プロセス”を、標準化・可視化・自動化し、法務サービスの提供モデルそのものを再設計する動きが広がっています。さらに、事業環境の複雑化に伴い、法務と他部門との連携はこれまで以上に重要性を増しています。AI導入プロジェクト、データ利活用、海外展開、M&A、ガバナンス強化、サプライチェーン管理など、企業の主要テーマは法務単独での対応が困難になっており、事業部門・DX部門・人事・経営企画・財務などとの横断的な連携体制づくりが競争力そのものに直結する時代となりました。その一方で、法務部門が“守りの管理者”に留まるのではなく、戦略的判断や価値創造のプロセスに関与する機会も拡大しています。事業リスクと成長機会を同時に見極め、組織に適切な意思決定を促す“未来志向の法務”が求められています。

第4弾となる本カンファレンスでは、「法務の再定義」―リスクと機会の両輪で経営をドライブする法務の未来像をキーワードに、最新の規制動向、AI活用の実践、ガバナンス強化の潮流、戦略法務としての役割変革について多角的に議論します。法務が“業務部門の相談窓口”から“経営の意思決定をけん引する中枢”へ進化するための道筋を明らかにし、組織全体の競争力につながる実践知を参加者と共に考察した。

■基調講演(1)

企業法務進化論
-企業価値向上に資する企業法務部門の役割変化と真価
~新しい資本主義の成功の鍵を握る“教養としての会社法”~

法政大学 名誉教授
『教養としての「会社法」入門』著者
柴田 和史氏

東京都生まれ。東京大学法学部卒業、東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了、法学博士(東京大学)。現在、法政大学名誉教授。元法政大学法科大学院研究科長。元 厚生労働省・中央労働委員会公益委員(通算6期)。弁護士。これまでに、旧司法試験委員、新司法試験委員(通算11期)、合併・分割に関する商法研究会(経産省)座長、持株会社の設立に関する商法研究会(経産省)座長、企業統治に関する商法研究会(経産省)座長などを歴任。

メダカの体長は約3cmで、シロナガスクジラは約30m(=3000cm)。1000倍の差異がある。株式会社を「資本金」で比較すると、資本金1000万円の企業と100億円の企業ではメダカとクジラ同様の1000倍の差異となる。そしてもちろん資本金1兆円企業も存在する。「会社法」を扱う人は、これだけの差異のある株式会社を同じ網で捕まえる、という難題を強いられている。

株式会社の代表取締役社長は偉いのか?と問われると、大抵の人は「偉い」と答える。しかし会社法の世界で株式会社を扱うときは、総株主の意思=株主総会の決議や取締役会のほうが上位にくる。代表取締役社長は会社法と労働法・経営学の世界の結節点にいるのだ。法の範疇や視点の違いを意識していただきたい。

ChatGPTはどの程度の実力を持っているのか?株式会社の取締役会の決議の瑕疵に関連する、とある質問を今年の1月に投げかけてみた。するとGhatGPTは、株主総会についてのルールを、誤って取締役会に適用して間違った回答をしてきた。取締役会決議と株主総会決議が異なるものであることを理解していなかった。そのほか、判例の引用を含め二重、三重の誤答をさらりと堂々としてきた。全体として100点満点で15~20点の回答であった。

ChatGPTはロースクールの学生であれば誰もが知っていなければならない有名な最高裁判決や通説も理解しておらず、ChatGPTの回答を仮に真に受けて引用したりすると訴訟で大変なことになる。人間による検証は必須だ。ただし、2か月後に同じ問題を投げかけてみたところ、ChatGPTのバージョンの進化か、判例の引用は正しくなっていた。しかし、法律的観点から曖昧に述べてはいけない「無効か取消しかの違い」について明確・精確に回答することなどは相変わらずできていなかった。

回答内容の虚偽に加えて、引用の条文番号や内容も平然と虚偽を示してくる。ChatGPTで下書きされてきた文書を法務部門の人間がチェックする作業は、これからますます大変になるだろう。なぜなら、人が下書きを書いていれば、その人は「このあたり、よくわからないので自信がありません。」と言うだろう。しかしChatGPTはそんなことを言わない。だから、「虚偽の事実があるところを見抜く力」は皆様にとってこれから非常に重要になる。

監査等委員会設置会社における監査等委員会のメンバーは、なぜ取締役なのか?(監査等委員会設置会社の特異な点)、そして、落語の『花見酒』と同様の内容である株式会社が行った相互的な株発行の第三者割当ての話。この二つ(の判例)も参考になるテーマである。それらは著書の『教養としての会社法入門』(日本実業出版社刊)や、柴田総合法律事務所のホームページを参照いただければ幸いだ。

ChatGPTの進化は早い。しかし平然と嘘をつく。また、「木だけを見るのではなく、森全体を見ることが必要」。これらのことに留意いただきたい。

■課題解決講演(1)

法務AIを組織の力に。CoCounselが導く
『信頼できる根拠』とグローバル基準の安全性

トムソン・ロイター株式会社
プロダクト・マーケティング本部 統括部長
森下 馨氏

2010年に帰国後、合同会社DMM.comやサーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社をはじめとした日系企業及び外資系企業にて、事業企画部門、SCM部門や法務部門に属し、ビジネス及び貿易を含む社内全体のコンプライアンスの管理に従事。2020年より現職。上記の経験を活かし、日本国内及びグローバル化に係る法務・貿易業務のDX化を推進。音楽家としても活動している。

リスクを減らす、事業を止めない、少人数で成果を出す――。こうした目的のために、さまざまな悩みを抱えている企業・法務担当者は多い。具体的には、ビジネスのボトルネック化、外部専門家費用のブラックボックス化、属人化とサイロ化、人材不足などが解決すべきポイントとなるだろう。

トムソン・ロイターのリーガルエコシステムを紹介する。“CoCounsel Core 2.0”は生成AIリーガルアシスタント。包括的なリーガルAIアシスタントであり、日本市場に寄り添った開発体制と、セキュリティと信頼性を保持している。

弊社にはその基盤となるサービスも複数ある。“Westlaw Japan”は法情報総合オンラインサービス、“Practical Law”は法律実務情報データベース、“Legal Tracker”は法務支出・案件管理ソリューション、そして“HighQ”は法律業務基盤ソリューション、である。

CoCounselは、(1)条文レベルの精度と出展の透明性 (2)他のツールが気づかなかったリスクを独自に発見 (3)交渉戦略の実用性、といった面で優位に立つ、との生成AIサービス比較調査結果がある(架空の法務タスクにて同条件・同プロンプトで検証)。

CoCounselにはリーガルタスクに最適化された「スキル」がある。スキルとは法律の専門家とAIの専門家がタッグを組んで開発したプリセット機能。専門性の高いユーザーからの質問の精度を上げ、LLM(大規模言語モデル)への入力が明確かつ正確であることを調整。その結果、LLMから回答される情報は、より専門性の高い内容でユーザーに返答される

Westlaw JapanにAIリサーチ機能が搭載されCoCounselと繋がると、法的リサーチの立ち上がりを支援するだけでなく、リサーチ業務の多くを実際に代行できるようになる。結果を素早くレビューし、事業部・依頼者への価値ある助言に注力できる。

最優先事項はセキュリティだ。ユーザーがアップロードした文書は、LLMとは独立して専用サーバ上で管理。通信はすべて暗号化され、プロンプトと共にLLMに送られた後も、そこで保存されることはない。もちろんユーザーデータがAIモデルの学習に利用されることは一切ない。最新のAIマネジメントシステムであるISO/IEC42001:2023に準拠、認証を取得している。

HighQは、幅広い法律業務に対応する業務ハブだ。高度なカスタマイズ性、グローバル対応、利用拡張性という特徴を持つ。Legal Trackerは、案件管理×請求×支払いを一元化し、外部弁護士費用を可視化・最適化する。

コンプライアンス強化、事業スピード向上、コスト最適化、グローバル標準化、AI活用の実装と統制にトムソン・ロイターのエコシステム(一つのプラットフォーム)を活用いただきたい。法務部門の変革は、単一製品では起きない。信頼できるコンテンツ、実務ナレッジ、AI、ワークフロー、支出管理がつながって初めて、経営にインパクトを出せるのだ。

■特別講演(1)

進化する企業法務とコーポレートガバナンスの現在地

日比谷パーク法律事務所代表、弁護士
久保利 英明氏

1944年埼玉県生まれ。67年東京大学在学中に司法試験合格。68年東大法学部卒業。71年弁護士登録、森綜合法律事務所(現・森・濱田松本法律事務所)入所。98年日比谷パーク法律事務所を開設。2001年度第二東京弁護士会会長、日本弁護士連合会副会長。09年一人一票実現国民会議共同代表。14年第三者委員会報告書格付け委員会委員長。22年日本ガバナンス研究学会会長。01年の野村ホールディングス社外取締役就任を皮切りに、日本取引所グループ社外取締役、農林中央金庫経営管理委員やソースネクスト社外取締役を歴任。

現在の弁護士は約4万7000人。2026年の司法試験合格者は1581人だ。弁護士新規登録のうち、東京都での登録者数は67%で、大都市圏以外の地方開業弁護士は10%程度しかいない。

25年5大法律事務所の新人採用数は約300人(合格者の約17%)。初任給は準大手事務所でも1000万円を超えている。企業内弁護士の数は25年6月現在3596人。AI時代においてAIをコントロールできる社内弁護士は必須だが、弁護士は明らかに不足しており、企業内弁護士は採用難である。

会計不正事件が相次いで発生・発覚している。例えば、オルツの循環取引や、ニデックの会計不正。後者では創業者の永守重信氏が2000億円を超える会計不正の責めを負わされており「役員責任調査委員会」が設置された。企業のトップでも大会社であっても、お目こぼしはなくリスクは免れられない時代だ。

フジ・メディア・ホールディングスとフジテレビジョンの一件では、第三者委員会報告書が注目された。委員会の設置目的であった“企業のガバナンスの検証”は果たして十分になされたのだろうか。私は若干不満がある。PTSDに罹患した女性アナウンサーを救済し、安全配慮義務を全うして力になってあげる。それが会社側にできなかったのはなぜ、どうしてなのか?という視点が抜けていると考える。メディアとしてあるべき姿はどのようなものか、最前線で頑張っているアナウンサーを守るためにフジテレビは何をすべきだったのか、を報告すべきではないだろうか。

第三者委員会の調査や報告書作成には膨大な費用がかかっている。その費用を出しているのは企業・会社だ。その会社が再びよみがえるために、その一助になるような報告書が欲しいはずだ。ニデックの場合も、会計不正の真因は何か。永守重信氏の単独責任とされたが、社外取締役、監査委員会、会計監査人によるガバナンス不正の検証はなされたか。それがほぼないニデックの報告書も、不満なしとはしない。

次にサイバー攻撃・ランサムウェア被害について。システム構築力と運用能力と、ペネトレーション(侵入)テスト力およびマンパワーと予算不足との相関関係がある。まだ調査中で報告が出ていないアサヒグループホールディングスやアスクルの事例があるが、結局のところは「信用力の毀損」が起こり、株価や会社に大きな影響がある。攻撃を受け被害が出た際に必要なのは、リーガルな発想と、サイバー攻撃に対応するセンス、テクノロジー。日本はそもそも弁護士が足らず、この両方とも弱い。

アクティビストによる同意なき買収(TOB)と対抗策としてのMBOの限界について。マンダム、養命酒製造、豊田自動織機などさまざまな例が報道されている。マンダムの件ではMBOの効果と逆効果が表れた。養命酒製造の件では、結果として一体何を守れたのか、疑問が残る。お金が溢れている今、日本は世界中から狙われている。どうやって守り切るか。防衛のために経営資源を法務に相当投入しなければ、企業を守り切れない。

最後に法務省法制審議、会社法制(株式・株主総会等関係)部会の試案について。日本の企業を守るために、これは来年中に法案となる方向だ。(1)従業員への株式無償交付可能による報酬増加 (2)株主総会での提案権行使要件の厳格化による同意なき買収予防 (3)オンラインのみの株主総会開催可能化による総会の変化 (4)企業が実質株主の認識ができる制度の創設による同意なき買収へのけん制、などが検討されている。

どのようにして企業法務を強くしたらいいか、会社を守ったらいいのか。今まで述べてきたように、企業法務は新しいフェーズに入っており、旧来の考え方は変えたほうがいい。考え方を変えないと、皆さん(の会社)は持たないだろう。

■課題解決講演(2)

人材流動化時代における「法務ファンクション」の再定義
AIとアウトソーシングによる体制設計

Authense法律事務所
企業法務分野マネージャー
西尾 公伸氏

第二東京弁護士会所属。中央大学法学部法律学科卒業後、大阪市立大学法科大学院を修了。弁護士登録後、ベンチャーファイナンスを中心に企業法務に注力し、当時まだ一般的でなかった種類株式を活用した大型資金調達に携わる。企業法務分野のマネージャーとして、投資契約、労務問題、企業危機管理、M&Aなど多岐にわたる案件に対応。企業の法務人材不足を解決するために法務人材のアウトソーシングサービスを立ち上げ、責任者として指揮を執る。

法務を取り巻く前提条件は、すでに大きく変わっている。外部環境の構造的変化としては、法務人材市場の流動化、即戦力採用の難化、業務の高度化・複雑化などがある。内部で起きている構造的問題としては、長期勤務によるベテラン化、ナレッジが個人の経験に依存、業務理解の断絶や制度の不均衡などが挙げられる。

「今」の課題は、欠員や繁忙期により目の前の業務が回らない/契約審査・確認業務が滞り、事業スピードに影響が出る/調整・説明対応が重なり、法務の負荷が高止まりする。「これから」の課題は、人材流動化を前提とした、業務や判断を安定的に引き継げる体制の構築/ナレッジが残らず、引継ぎや再現性に課題が残る/グループ対応・リーガル関与範囲の拡大に対応できない/AI活用や外部リソース活用を前提とした設計に移行できない。従来型の体制では、こうした数々の課題に対応しきれない

従来の法務は、「人材(担当者・部署・人数)」と「役割(リスクを指摘する部門・ブレーキ役)」を前提に捉えられてきた。しかし、今後は「機能」として捉え直し、切り分けていきたい。法務=企業活動を支えるファンクション。人や役職にひもづけず、「どの機能がどの場面で必要か」から考える。事業や経営の意思決定プロセスの中に法務機能をあらかじめ組み込むのだ。

機能=ファンクションとは、企業活動を成立させるために安定的に果たされるべき働きであり、誰が担うかに依存せず「果たされているかどうか」で評価される。ファンクションは、社員・AI・外部リソースに分解し再配置することが可能。それらの要素を、体制設計に組み込むべきだ。社内人材とAIが担う機能を整理してみたのが下記のスライドだ。

リーガルテック・AIによる情報整備と、社内人材による意思決定の隙間を繋ぐために活用できるファンクションが「法務アウトソース」だ。情報や論点を事務判断として使える形に整理・構造化し、社内の判断軸・ルール・前提を踏まえて情報を取捨選択・翻訳する。「AIの示唆」や各部門の論点と「社内判断」の間に立ち、意思決定可能な状態にまで引き上げる。社内人材が最終判断・決定を行える状態を継続的に整える機能を、法務アウトソースが担うのだ。

人材流動化時代。法務アウトソースは多くの企業では、先述した「今」の課題に即効性のある使い方から始まっている。その一方で、活用の幅はそこに限られるものではない。次の問いも同時に考える必要がある。判断や対応の前提が、特定の人に閉じていないか/業務対応だけでなく、判断プロセスまで支えられているか/人が入れ替わっても同じ水準で機能し続けるか/ナレッジや判断軸が組織側に残っていくか。単なる業務処理の補完だけでは、体制としての安定性や再現性は担保しにくい

法務アウトソースが担うファンクションは、実務の中で拡がっている。複数主体を前提としたリーガルニーズ整理/社内で判断と対応を自走させるための支援/不足する法務ファンクションの補完/ナレッジと判断軸の整理可視化/意思決定と説明を支える構造化、を担う。

弊社のソリューション「法務クラウド」は、すぐに、長く、いろいろ使える
・相談からサービス開始まで通常2週間
・弁護士が既存フローに入り込む形で業務開始
・担当弁護士は固定制
・業務両に応じたプラン変更などフレキシブルに使える
・契約審査はもちろん、さまざまな法務業務の相談が可能
・弁護士以外の専門士業への相談、依頼も可能
こうした特徴を持つ。ディスカッションの機会をいただければ幸いだ。
※大創産業、クラウドワークス、ヤーマン、レバレージズの導入事例紹介あり。

■課題解決講演(3)

本当に使えるプレイブックへ
-実務運用上の課題と、その解決策-

MNTSQ株式会社 代表取締役
長島・大野・常松法律事務所 弁護士
板谷 隆平氏

2013年東京大学法学部卒業。在学中に司法試験予備試験に合格し、2014年に弁護士登録。同年に入所した長島・大野・常松法律事務所(NO&T)在籍中、M&A(合併・買収)の契約書からリスクのある条項や抜け漏れを探すため、山のように積まれた書類を1枚ずつ確認し問題点の有無を調べる日々を過ごした。法務領域のAI/テクノロジーによる効率化の余地を確信し、2018年11月に東京大学時代の知人と共にMNTSQ株式会社を創業。「フェアな合意がなされる社会」の実現を目指す。2020年に「アジアで注目すべきリーガルテック業界の人物30選」に選出された。

プレイブックとは、法務部からの“AIへの指示書”だ。MNTSQは、日本経済新聞の「法務力が高い企業」ランキング上位10社のうち9社が導入している。導入社がプレイブックをどう使いこなしているかやプレイブック活用の課題も含めて話をしたい。

法務相談の『落とし所』の判断が属人化してしまい、回答にぶれが生じる/AIを導入したものの「自社のビジネス特有の事情」や「過去の交渉経緯」をわかってくれない/新入社員が「自社独自の勘所」を掴むまでに時間がかかる……。このような悩みを抱える企業は多い。社内合意されたガイドライン(プレイブック)があれば、以下が実現する。

属人化が防げる
AIに「自社の勘所」を学習させることができる
暗黙知を形式知化し、誰にでも共有できる
契約審査の確かな拠り所となり、審査業務が効率化できる

秘密情報の定義、損害賠償リスク、契約期間など、各社守りたい基準はさまざまあるだろう。それらを目に見える基準にし、スプレッドシートのような形にまとめるイメージだ。プレイブックはAIを“期待通りに動かす”ための設計図。人がどう判断してきたかをAIに共有するためのものだ。

弊社の調査では、プレイブックが必要・有用であるという企業は多いものの、整備されてうまく活用している例は少ない。作成、維持管理に非常に手間がかかるからだ。作成段階では、論点とチェック条件設定の難易度が高い。検証段階では、ノウハウが必要な上に検証にかかる負荷が高い。そしてメンテナンスが続かず、プレイブックが陳腐化する。

作成・検証・更新を自社で抱え続ける必要があると、プレイブックはやがて使われなくなる。使われ続けるには、精度を保ちながらメンテナンスコストを下げなければならない。MNTSQは、法律事務所と連携し、実務知見を更新プロセスに組み込んでいる。弁護士の専門知を凝縮した基準でプレイブックを作成し、検証段階では不確実なLLMの精度コントロールを行う。メンテナンス段階では、法令改正をふまえたチェック項目の見直しなどでユーザーの運用コストを低減する。

 AIが、判断に必要な情報を整える。法務は、判断に集中する。弊社の「AI契約アシスト」においては、プレイブックを活用して低リスク案件は事業部門で自己解決し、高リスク案件は法務部門に自動的にエスカレーションされる体制を構築することができる。高リスク案件の場合、法務部に渡る時点で判断の前提が揃っている状態が作れる。

・「プレイブック」は人間の判断基準をAI Agentに渡すもの
・最高品質の「プレイブック」をMNTSQから提供
・AI Agentが「プレイブック」を踏まえて人間をサポート

■特別講演(2)

三井物産の法務戦略
~企業価値向上に向けて求められる、攻めと守りの経営企画部門~

三井物産株式会社
法務統括部長
平 浩明氏

1994年三井物産(株)文書部法務第一室入社。中部支社(名古屋)、米国法務研修(University of Pennsylvania, Law School, LLM)、豪州三井物産勤務等を経て、2016年法務部アジア・大洋州法務室長、2017年同金属・エネルギー法務室長、2018年アジア・大洋州本部Chief Legal Officer(在シンガポール)。2024年4月より法務統括部長。ニューヨーク州弁護士、英国事務弁護士(Solicitor)。

◎法務部門の変貌する・進化する役割

法務部門には、会社組織として必要とされる機能部署としての役割と、会社経営を支える、あるいは支援する機能部署としての役割がある。

領域別に言えば、ビジネス法務/コーポレートガバナンス・コーポレートセクレタリー/コンプライアンス・Integrity(誠実さ)浸透/紛争対応/危機対応・不祥事対応/グローバルグループでの法務対応力強化、などが挙げられる。

機能別に言えば、会社の信頼性を高める、経営の実効性を高める、会社の経営戦略を実現する、会社の企業価値を上げる、Legal RiskをManageする、企業の競争力を強化する、会社を紛争や危機から守る、などが挙げられる。

変化の時代に求められる姿勢としては、以下。

・より広い視野で法務リスクを捉える。
・時代の変化を捉え、押さえるべきリスクを常に考える。
・大きなリスク変化の中でも事業創出に積極的に貢献する姿勢が重要。
・リスクはチャンスでもある。いち早くリスクをマネージできる会社は、競争を勝ち抜くことができる。
・法令・政策・執行などの変化につき、経営陣への認識を促すことは、法務部門の重要な役割。
・全社的にも重要なリスク管理が全体としてできているかを目配りする。強化すべきところは積極的に提言する。

昨今は、サステナビリティ/地政学/事業環境変化/デジタルに関連するリーガルリスクも増えている。例えばESG観点=気候変動対応、環境問題、GHG、生物多様性侵害、人権侵害などのリスクにも対応しなければならない。

◎三井物産法務部門の戦略/人材育成/DX

弊社のパーパスやミッションについては、以下のスライド参照。

弊社グループのあらゆる法務に関わる全メンバーが相互に連携し、一流法律事務所やDXベンダー、ALSP(代替法務サービス事業者)、AIとも協業・活用する大きなリーガル・エコシステムを形成。弊社グローバルグループの経営と事業の発展に向け最高の法務機能を提供し、企業価値向上に貢献している。

人材育成基本方針、人材育成基本原則も策定し、役職に応じた役割期待や、今後の複数のキャリアパスを提示して、高度経営人材や高度法務人材を育成していく。法務部門において必要とされる主要分野を例示・列挙した“スキルマップ”や、社員が参照できる先輩や先達のキャリア紹介資料もある。

DX(デジタルトランスフォーメーション)やAI導入も進めている。全社でCopilotを利活用しており、事業部が法務部門への相談に先立って壁打ちを実施することに加え、法務部門においては、案件可視化(Power BI)/調査/レビュー/契約書管理/電子署名/契約書保管の各ツールも導入済み。CLM=Contract Lifecycle Managementへの一元化を検討中だ。

2026年3月25日(水) 会場対面・オンラインLIVE配信でのハイブリッド開催

source : 文藝春秋 メディア事業局