多様な意見を包摂するのが自民党だ
7月31日、飲食料品の消費減税についての本格的な議論が党内でスタートしました。前日に高市早苗首相が、来年4月から2年間、飲食料品の消費税率を8%から1%に引き下げる方針を示したことを受けての議論です。
この日、私は自民党税制調査会の役員会に出席しました。そこでは、政府の方針に対して慎重な意見が多く聞かれました。
ですが、その後に開かれた税制調査会・社会保障制度調査会合同会議では、消費減税への賛成意見が相次ぎました。合同会議は党所属議員なら誰でも出席でき、今年2月の衆院選で初当選した1回生議員の姿も多く見られました。
何より役員会と違ったのは、次のような発言が相次いだことです。
「選挙で約束したのだから公約を守るべきだ」
「総理がおっしゃっているのだから(減税を)進めるべきだ」
そんな中、私はあえてこう発言しました。
「果たして議論は尽くされているのでしょうか」
自民党が今年2月の衆院選で公約に掲げた「飲食料品の消費減税」をめぐり、党内で異論が噴出している。減税慎重派の一人が、稲田朋美衆院議員(67)だ。7月31日の合同会議後、囲み取材で「総裁が言っているからやるというのは、自民党らしくない」と語る姿は大きくクローズアップされた。
稲田氏といえば、今年4月の再審法改正の自民党議論の際、法務省の掲げる方針に強い反対意見を表明したことが“稲田の乱”として注目されたこともある。なぜ党の公約でもあった消費減税に慎重論を唱えるのか。
衆院選の最中、私はSNSに〈(消費減税を)お約束いたします!〉と投稿しました。この時の投稿を持ち出して今回、私のことを「裏切り者」などと糾弾する声があがりました。しかし、私は飲食料品の消費減税そのものに反対しているわけではありません。
選挙期間中には、非正規で働いている女性やひとり親の方などから「スーパーに行っても食料品の値段が高いから何とかしてほしい」という声をたくさん頂戴しました。物価高に苦しむ国民のみなさまの負担を軽減させる策を講じたいという気持ちは、選挙後の今も全く変わりません。飲食料品の消費減税も、その一つの手段です。
“肝”は給付付き税額控除
ただ、本当に困っている人たちを手厚く支援するための制度設計とならなければ意味がありません。その点、私は先の衆院選の公約の“肝”は、消費減税の先にある「給付付き税額控除」だと考えてきました。
日本では諸外国に比べて、中・低所得の勤労・子育て世代の税・社会保険料負担が特に重い。そのことは、税金と社会保険料から現金給付を差し引いた純負担の収入に占める割合を示したグラフである「翁カーブ」(翁百合・日本総研シニアフェロー作成)からも明らかです。
こうした実態を改善するための方策として公約で提案してきたのが、税金(所得税・住民税)を差し引いて負担を減らす「税額控除」と、納税額が少なくて引ききれない分やそもそも納税をしていなくて控除の恩恵を受けられない場合に現金で支給する「現金給付」を組み合わせた「給付付き税額控除」でした。
ただ、この「給付付き税額控除」の制度が整えられるまでには少なくとも2年間ほどの時間が必要なので、その間、国民の皆さまの負担を少しでも軽くするための“つなぎ”の措置として、消費減税(飲食料品の消費税ゼロ)を行う。その実現に向けて財源やスケジュールの検討を加速することが2月の選挙公約でした。
「給付付き税額控除」の導入のためには、行政が金融所得や資産も把握することが望ましい。そもそも日本では困っている世帯に向けてきめ細やかな支援が行われてこなかったのが現状です。そのことが浮き彫りになったのが、コロナ禍でした。コロナ禍による経済的影響への支援策として1人一律10万円を世帯主に配布しましたが、この時も、所得に連動したきめ細やかな給付を行うシステムがあれば、困っている世帯へより機動的で効果的な現金給付が実現できたはずです。
金融所得や資産の把握という行政のインフラの整備は、今後のためにも必要です。そしてそのために少なくとも2年間の期間がかかるのであれば、その間の消費減税も財源を確保したうえであれば昨今の物価高対策としてやむを得ない。
しかし、今年2月に公約に基づき発足した超党派の「国民会議」の議論の中で、税額控除は導入を先送りすることが決まり、金融所得や資産の把握も将来の課題と位置づけられたのです。
年額プランがおトク!月あたり900円で全記事読み放題
月額プラン
1ヶ月更新
1,200円/月
オススメ!
年額プラン
10,800円一括払い・1年更新
900円/月
1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き
電子版+雑誌プラン
18,000円一括払い・1年更新
1,500円/月
※1年分一括のお支払いとなります
※トートバッグ付き
有料会員になると…
日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事が読み放題!
- 最新記事が発売前に読める
- 編集長による記事解説ニュースレターを配信
- 過去10年7,000本以上の記事アーカイブが読み放題
- 塩野七生・藤原正彦…「名物連載」も一気に読める
- 電子版オリジナル記事が読める
source : 文藝春秋 2026年10月号

