上皇ご夫妻 裏返った陛下の声

山根 基世 フリーアナウンサー

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 1933年12月23日、昭和天皇の第一皇男子として生を受けた上皇さま。美智子さま(1934〜)と手を取り合い、戦後日本の「象徴天皇」とは何か、模索をつづけてこられた。その歩みをつぶさに辿ったNHKのドキュメンタリー『天皇 運命の物語』(全4回)でナレーションを務めた山根基世氏が語る。

お二人で「象徴」を体現された上皇ご夫妻 Ⓒ時事通信社

 1948年生まれの私が、皇室を初めて意識したのは、1959年、皇太子だった上皇さまと美智子さまのご成婚のときです。新聞の一面を飾った美智子さまの姿に心を奪われました。皇太子が恋をして民間人と結婚するなんて、当時の常識からは考えられないこと。子供心に、シンデレラの物語を目の当たりにするような思いがしましたし、敗戦でどん底に落ちていた国全体が、一気に華やいだことを覚えています。

 一方で、戦後民主主義の教育を受けた私たちの中には、皇室の存在や、昭和天皇の戦争責任について、心の底に、小さな「わだかまり」を抱いている人が多いのも確かだろうと思います。

 それでもなお、私は上皇ご夫妻には、特別な敬愛を抱いています。理由はひとえに、お二人が誠実、質素、謙虚な暮らしぶりで、常に国民に寄り添う姿を見せてくださっているからです。

 印象深いのは、1975年、初めての沖縄訪問です。7月の酷暑の中、お二人は「ひめゆりの塔」を前に戦争体験者のお話に聞き入っていらした。したたる汗を拭くこともせずに、じっと。

 そのご夫妻に向かって火炎瓶が投げ込まれました。騒然とする中、動揺もみせずお二人は静かに、次の訪問地に向かいます。沖縄の怒りに直面したその日の夜、上皇さまは、事前にご自身で考え抜いて書かれたメッセージを発表されました。

「払われた多くの尊い犠牲は、一時の行為や言葉によってあがなえるものではなく、人びとが長い年月をかけて、これを記憶し、一人ひとり、深い内省の中にあって、この地に心を寄せ続けていくことをおいて考えられません」

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source : 文藝春秋 2026年11月号

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