まずは当事者の目線になることから
まずは、次の場面を想像してみてください。
今日はあなたの誕生日。妻と子供たちが集まって、あなたを囲んでいます。テーブルには瓶ビールが置いてある。あなたは「乾杯しよう」と言いました。見ると、もう栓が抜いてある。気が利くじゃないか。「ありがとう、開けてくれたんだ」とあなたは言う。
「えっ」と息子が固まります。「お父さん、さっき自分で開けたんだよ」。
さて、どんな気持ちになりましたか。驚き、不安、困惑といったところでしょうか。これが、認知症の当事者が見ている風景です。
この話の原型はJDWG(日本認知症本人ワーキンググループ)の認知症当事者である藤田和子さんから10年ほど前に伺ったものです。診療の場面で他の認知症の方からも類似の話をよく聞くようになりました。
こんな小さな場面の積み重ねの先に、屈辱や焦り、怒鳴る、殴るといった事態がある。認知症当事者とのかかわり方は、その内面でなにがおきているかが分かると、グッとクリアになります。つまり、家族が認知症になった場合、あなたの親や配偶者が、どういう風景を見ているのかを理解することが重要なのです。

私が注目するのは「記憶のしづらさ」です。よくある認知症のはじまりから説明していきましょう。
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